第22話 疑惑

「皆、大丈夫かい?」


 黒崎守くろさきまもる刑事が、拳銃を手に駆け寄って来た。


 全員、唖然あぜんとしている。


「く、黒崎刑事……どうしてここへ?」


 九条菜々花ボクは、混乱しながら尋ねた。


「あー……学園祭の委員会を開くと聞いていたからね。たまたま学校の前を通ったら、この教室だけ灯りが付いていたので、もしかして君達かな?と思ってね……そしたら、こんな場面に遭遇したのさ」


 淡々と答える黒崎刑事に、ボク達は少し複雑な気持ちになった。


「あ、あの……普通は、い、威嚇射撃いかくしゃげきをするのでは……?」


 伊集院継治いじゅういんつぎはるがビクビクしながら聞いた。


 すると黒崎刑事は、鋭い眼光を継治に向けた。


「人質はぐったりして、犯人は武器を所持し興奮状態!こういう差し迫った状況では威嚇射撃は行わない。威嚇して状況が悪化したらどうする?國枝くにえださんが殺されても良かったと?」


「すすす、すみません!」


 継治は、黒崎刑事の圧力に声を震わせ謝罪した。


「あ……ごめんね、伊集院君。人の命に関わる事だからついキツい言葉を……」


 黒崎刑事は、打って変わって申し訳なさげな苦笑いを見せた。


 皆、初めてのことに動揺していた。目の前で人が銃殺されるなど、誰が想像出来ようか……。


 黒崎刑事はペストマスクを拾い上げた。

「こいつが犯人ってことか……ん?この顔見たことがあるぞ!何度か補導されて少年課に連れてこられてたな」


「あの、黒崎刑事……それが、その人Dr.ペストじゃないんです。さっき美井びい先輩から話を聞いたんです……」


 國枝彩希くにえださきは、ボクに支えられながら口を開いた。


「犯人じゃない?……ペストマスクを被って、人を襲って?普通、Dr.ペストと考えるのが妥当じゃないかな?それとも皆、ソイツの言うことを鵜呑うのみにしてるのかい?」


 黒崎刑事は、まくし立てるように話した。


 彩希姉ぇは言葉に詰まり、皆も擁護ようごすることが出来なかった。


「それよりキミ、首を怪我してるじゃないか!すぐに病院へ……それと、キミ達も今日は帰りたまえ。後は僕に任せて」


 教師の徳山杏子とくやまきょうこにもさとされ、ボク達8人は学校を出た。








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