第21話 二人目の来訪者

Dr.ペストヤツの命令はふたつ……」


 美井びいは、静かに口を開いた。


「ひとつは、昼間に九条のスマホを盗むこと。もうひとつ、この時間にここへ来て、お前達をすること……」


(スマホは例の動画を削除したいのだろう……けど、菜々花ボク達を……かく乱?何故なぜだ……?)


 これは、メンバー皆が同じことを思った。


「おい、菜々花のスマホはどこだ?」

 瑠羽太るぅちゃんが、ダメ元で確認する。


「指定された場所に置いてきた。既にアイツが持ってると思う……」


(かく乱?この時間、この場所を知っていた?……一体なんの為だろう?……ダメだ、時間が惜しい……後で考えよう)


 ボクは、國枝彩希さきねぇの事が気に掛かり、頭が上手く回らなかった。


「最後にもうひとつだけ……Dr.ペストの正体は見た?もしくは、何か手掛かりになるようなコトは?」


 美井は身体を震わせながら、声を荒らげる。


「見てねぇよ!おいおい、もう勘弁しろよ!……俺だって怖いんだよ!ベラベラ喋ってるのがバレたら、犬だけじゃなく俺も殺され……」



 パンッ!



 廊下に大きく乾いた音が響いた。


 皆、驚くと同時にキーンッと激しい耳鳴りに襲われ、両手で耳を塞いだ。


「な、なんだ?何が起きた?……えっ?」


 瑠羽太は自分の目を疑った。


 美井は、頭から血を流して倒れている。そして、ピクリとも動かない。


「キャー!なになに?何なの?どういうこと?」


 徳山先生と神山姉妹はパニックに……。他のメンバーも、ワケが分からず動くことすら出来ない。


 そんな中、ボクは彩希姉ぇの元へ駆け寄ると、震える身体をしっかりと抱きかかえた。


「菜々ちゃん……ありがとう」


 彩希姉ぇは、こんな時でも無理して笑顔を作ってみせた。



 ふと気がつくと、薄暗い廊下の奥に誰かが立っている。

 皆、目を凝らしてそっちを見た。


 !!


 そこには、鋭い目付きで拳銃を構える黒崎守くろさきまもる刑事が立っていた。


 銃口からは硝煙しょうえんが立ちのぼっている。


 倒れてから、ピクリとも動かない美井……頭から流れる大量の血は、廊下を真っ赤に染めていた。


 誰もが……とわかった。


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