第18話 思わぬ来訪者

 桃ちゃんと菜々花ボクは、真っ暗な校内を早足で駆け抜けて、皆のいる明るい教室に帰ってきた。


 買ってきたジュースを袋から取り出すと、桃ちゃんの言った通り男達はじゃんけん争奪戦を繰り広げ、皆の笑いを誘った。


 こういった時は、大体無欲の伊集院継治つぎちゃんが勝つ。


 しばし、まったりとした時間を過ごすと委員会を再開した。


「ちょっと待って!ボク、おトイレ行きたい……」

 ボクは、赤面して手を挙げた。


「じゃあ私も行くよ、菜々ちゃん」

 彩希姉ぇが、ボクの手を繋いでトイレまで着いてきてくれた。


「彩希姉ぇありがとぉ。夜の校舎はひとりじゃ歩けないし……」


「私もおトイレ行きたかったから全然いいよ。夜は不気味だしひとりで行くのはねぇ……」


 彩希姉ぇは、面倒みもよく昔から優しかった。自分とは比べ物にならない女性で、ボクの憧れでもある。


 薄暗いトイレの電気を付けると、ボクは個室へ入った。彩希姉ぇは、鏡の前でリップクリームを塗ると、


「菜々ちゃん、私 入り口の前にいるね」


「うん!絶対待っててね!」

 彩希姉ぇは、トイレに用は無かった。ボクの為にただ付き添って来てくれただけだった。


(やっぱり彩希姉ぇは優しいなぁ。大好き……)


 ボクは、用を足しながらニヤニヤしていた。


 そんな矢先……


「きゃあああっ!!……いやっ!!」


(さ、彩希姉ぇの声!!)


 今までに聞いた事のない彩希姉ぇの叫び声に、ただ事ではないと察知したボクは、トイレから飛び出した。


 ……!!


 目の前の光景に、ボクの全身にゾクリと鳥肌が立った。



 彩希姉ぇの首を右腕で押さえつけ、ギラリと青白い光を放つナイフをかざしている……


 黒いクチバシマスクと、黒い衣装を身にまとった、まるで化け物のような連続殺人鬼……


 『Dr.ペスト』だっ!!


 な、なんでこんなところに……?!


 彩希姉ぇは真っ青な顔で、金縛りにでもあっているかのように動けなくなっていた。

 ナイフの先端を見るその瞳には、涙が溜まっていた。







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