第14話 黒崎刑事


 警察署内へ入り、誰もがオドオドする中、國枝彩希くにえださき が先頭をきり窓口に声を掛けた。


「すみません、唐突なのですが向ケ丘公園むかいがおかこうえんで起きた女子高生殺人事件を目撃した子がいるのですが……担当の方はいらっしゃいますか?」


 窓口にいる小太りの中年男性は、明らかに怪訝けげんそうな表情を見せた。


「あのね、お嬢さん……疑う訳じゃないけどそう言ってくる人、沢山いるのよね……何か証拠とかあるのかな?」


 菜々花ボクは、スッと前へ出た。


「ボクが目撃者です。動画を撮りました!」


「本当かね?……見せてもらえる?」

 窓口の男はすまし顔で手を差し出した。


「いえ、スマホを無くしました」


「は?……だからね、それは証拠がという事同じなんだよ、お嬢ちゃん」


「おじさん、オレは夕べ、ソイツと戦ったぜ」


 瑠羽太るぅちゃんは、自慢げに手を挙げた。


 男は呆れ顔で大きなため息をひとつついた。


「あのね、さっきも言ったけど警察は証拠が無いと簡単には動けないんだよ。それに、動画だの、戦っただの……信じられると思うかい?」


 すると、気の短いるぅちゃんが食ってかかった。


「だいたいおじさん刑事一課じゃないでしょ?話にならねえよ、一課呼んで、一課」


 男はムッとした……


「大体にしてお前達は学生だろ、なんだ昼間にうろついて。授業サボりか?警察を揶揄からかうな、学校に連絡するぞ!」


 瑠羽太はニヤリと口角をあげた。


「はい残念〜、今日は午前授業でしたぁ。事件について話したことも全部本当ですぅ〜」


 るぅちゃんは、男に向かって舌を出して澄まし顔を見せた。


「おい、瑠羽太やめろ!」


 焦った乙羽野キリトキリちゃんが止めに入る。


「バカにするのもいい加減にしなさい!」


 男が机を強く叩き立ち上がった。


 皆、カラダがビクついた。


「どうしました?」


 廊下の奥から30代くらいの若い男が声を掛けてきた。


「あっ、黒崎くろさきさん……」

 短髪でキリッとした太い眉毛の男が、爽やかな笑顔で現れた。


「僕に任せて下さい……さあ、君達こちらへどうぞ」


 ボク達は、ひんやりとした廊下のベンチに座らされた。

 蛍光灯がチラついて、少し不気味な雰囲気を醸し出していた。


「ごめんね、こんな所で……ジュース買ってきたから飲んでね」

 黒崎刑事は、抱えてきた缶ジュースをひとりひとりに配った。

「えっと、僕は黒崎守くろさきまもる。こう見えて一応……一課所属の刑事です」

 

 ボク達も、それぞれ簡単な自己紹介をした。

 人当たりの良い黒崎に、皆すぐに打ち解けた。


「本題だけど、実は僕……事件を担当してるんだ。あまり詳しくは言えないんだけど、ちゃんとした証拠もなし、証言も当てにならず進展していないのが実情なんだ……あ、コレ内緒ね」


 黒崎は笑顔で鼻の前に人差し指を当てた。


「それでなんだけど、という立場では、君達に協力するのは難しいんだ。……けど、僕は君達を信じるから、一個人のが仲間として一緒に犯人探しをするのはダメかな?」


 黒崎刑事は恐る恐る提案してきた。


「そんな……ダメとかないっスよ!是非お願いしたいッス!」


 るぅちゃんは、目をキラキラと輝かせていた。


 他の皆も、心強い味方が出来たと心から喜んだ。


「早速だけど、その事件でいくつか質問があるんだ……聞いてもいいかな?」


 黒﨑刑事は太い眉毛をキリッとさせた。


 ボク達は、黒崎刑事の言葉に耳を傾けた。











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