第13話 珍しく吉報

 天音琉空あまねりくは嬉しそうに話し始めた。

 皆、期待せず、それぞれにお弁当を食べている。


「特に瑠羽太るうた、お前は喜ぶぞぉ。なんと!あのえい美井びいが今朝、退学届を校長に叩きつけたらしいじゃん!」

 琉空はドヤ顔で関瑠羽太せきるうたを見た。


「マジか!……それは確かに、ビッグニュースだ……」

 瑠羽太も、他の皆も安堵の表情を浮かべた。


「噂では、半グレ集団にスカウトされて、関東の方へ行くらしいじゃん」


 アイツ等らしいな、と皆が思った。


「しかし、たまには琉空の情報も役に立つな」

 神山桃子かみやまももこ揶揄からかうと、皆が笑った。


「まあ、今の世の中情弱じょうじゃくは何かと不利じゃん」

 たまには琉空の言うことも一理ある。


「あれ?そういえば菜々花ななかがいないじゃん?」

 琉空がキョロキョロと見回す。


「あっ、うう、噂をすれば……」

 伊集院継治いじゅういんつぎはるが指を指す。九条菜々花くじょうななかも何やら騒がしい様子で人並みをかき分け現れた。


「皆ぁ、大変だ!ボクのスマホが無くなったんだ!」


 菜々花ボクは、べそをかいていた。


「家に忘れたんじゃないのか?」


 乙羽野おとわのキリトが人差し指で眼鏡をなおしながら聞き返した。


「違うもん!朝、教室で一度出したもん」

 ボクは頬っぺを膨らませた。


「それは困ったわね……今日、警察へ行って例の動画を提出しなくてはならないのに……」


 國枝彩希くにえださきは、そう言って菜々花の頭を撫でた。


「確かにこのタイミングで菜々花のスマホが無くなるのは不自然だな……」


 キリトの言葉に皆、動画で見た高校のジャージを思い出していた。


「る、瑠羽太君は、どど、動画も見れてないのにね……」


 継治の言葉に、瑠羽太は


「あー、動画見なくても大丈夫。俺も警察に証言するぜ!昨日会ったし……」


「……え?会った?……だ、誰に?」

 一同、綺麗に声を合わせた。


「だから……夕べ襲われたんだよ、Dr.ペストに……」


 瑠羽太は菓子パンを口に頬張ると、缶コーヒーで流し込んだ。


「昨晩って……病院の帰りにオレと会った後か?!」

 キリトが箸を置いた。


「ああ、そうだ……お、菜々花の卵焼き美味そう、いただき!……はむっ……美味うまっ」


「あー!ボクの傑作メインがぁ……」


 ボクは悄気しょげた……が、美味いと褒められ少しニヤニヤした。


「てか、瑠羽太、お前冷静過ぎだろ、まじで」


 桃子も箸が止まっている。


「冷静を装ってるんだよ!……思い出しただけで恐ろしいぜ。今までみたいな喧嘩とは訳違う……初めて殺気というものを感じたよ。俺は運良く逃げることが出来ただけだ……次遭遇したら確実に殺されるかもな。かなりのナイフの使い手だ。もし、お前達も出会ってしまったら……、だ」


 瑠羽太の傷ついた腕には鳥肌が立っていた。


 皆がお昼ご飯を食べ終わった頃、空を黒い雲が覆い始めた。生ぬるい風が吹く中、動画は無いがとりあえずボク達は警察署へと向かった。


 





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