第15話 聴取

「まず始めに、犯人はどんな容姿か教えて貰えるかい?」 


 黒崎守くろさきまもるは胸のポケットから黒い手帳を取り出した。


 関瑠羽太せきるうたは、不気味でおぞましい姿をしたについて説明した。


「なるほど、Dr.ペストか。うーん……けど、現場を目撃して動画を撮影したところを見られたのは九条くじょうさんだよね?しかし、何故か関係ないせき君が襲われた。これはどうしてだろう?」


「これは推測なんですけど、菜々花ななかの撮った動画の中で、犯人の足がチラリと映るのですが、 向ケ丘高等学校ウチの学校のジャージに見えたんです。もし、犯人が学校関係者だったら……菜々花と瑠羽太るうたを知っている人物……なんて思ったりして」


 神山桃子かみやまももこはモジモジしながら答えた。


「なるほど、それならね。……それともうひとつ、被害者の城田加奈子しろたかなこさんは違う学校だけど、知り合いかい?」


「そ、それなら、ぼ、僕が同じち、中学校でした。話したこともな、ないですが……」


 伊集院継治いじゅういんつぎはるが手を小さくあげて、オドオドと答えた。


「すると、城田さんを知っているのは伊集院君だけ、接触したことがある人も無しか……実は警察の方で白薔薇学園しろばらがくえんの生徒さん達には聴取したのだけれど、城田さんは人柄もよく、事件に巻き込まれるような人ではなかったらしい。……それから、この話をこのメンバー以外に知っている人は?」


「だ、誰にも話していません」


 継治の返事に、皆も頷いた。


「そうなると、無差別殺人事件ということですか?」


 乙羽野おとわのキリトが人差し指で眼鏡をなおしながら聞いた。


「うん、その可能性あるね。只……皆にはもうひとつ別の可能性があることを伝えたい、大事な話だ」


 皆、息を呑み込んだ。


「初めに言っておくけど、決して疑っているとかではない……気を悪くしないで聞いて欲しい。あくまでも可能性の話だ。それは、実際に現場を目撃し、動画まで撮った九条さん以外……他の皆はこの事件を知っている、アリバイのないだということ」


 一瞬、黒崎刑事の目が鋭くなったようにも見えた。


「え……」

「それって……?」

「そんな……」

 皆は少しザワついた。


 冷たい無機質な白い壁に寄りかかっていた瑠羽太が立ち上がった。


「ちょっと待って……オレ、遭遇してるんですけど?」


「……すまない関君、それを証明するものが無いだろ?」

 

 瑠羽太はしょげた顔でゆっくりと座り込んだ。


 一瞬の静寂に、薄暗い廊下の蛍光灯がパチンッと音を立てた。


「もう一度言うけど、皆を疑っている訳じゃないよ。只、話をまとめるとそういう可能性もあるというだけさ」


 黒崎刑事は、少し苦笑いを浮かべた。


「犯人は無差別殺人鬼の他に、学校関係者、または、このことを知っている私達の中の誰か……も、含まれる。そんな感じでしょうか?」


 神山千春かみやまちはるが恐る恐る尋ねた。


 黒崎刑事はコクリと頷いた。


 菜々花ボクは、缶ジュースを飲み干すと、ある事実を黒崎刑事に突きつけた。


「すると、黒崎刑事さんもですね」


「え……?」

 








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る