第6話 些細な手がかり
「なるほどじゃん、連続殺人鬼
「こっちがソイツのことはわからなくても、菜々花は現場を目撃してる、顔を知られているんだよ。狙われたりしないよね、まじで?」
「す、少しでも、て、て、手掛かりがあればね……」
「…………アッ!手掛かりなら少しだけあるよ」
ボクは、もう一度スマートフォンを出すと、動画を再生した。そして、一瞬明るくなった場面で一時停止すると、Dr.ペストの足元に指をさした。
「ここ、よぉーく見て。黒いポンチョの隙間からジャージを履いてるのが見えるんだけど、緑のラインが一本入ってるんだよ。これってさ……」
「こ、これって……
皆……戦慄した。
汗ばむ気温とは裏腹に、全員が肝を冷やした。
それを断ち切るように、
「全く、菜々花は変なとこに鼻が利くじゃん。イヌか、お前は!」
少しだけ空気は和らぎ、皆クスクスと笑った。
そこへ女子生徒二人組がやって来た。
「皆お待たせ」
キリちゃんと継ちゃんが想いを寄せる女性だ。
ボクも優しくて綺麗な彩希さんのことが大好きで、愛称を込めて
「彩希姉ぇ、待ってたよぉ……!」
ボクは彩希姉ぇに飛びついた。
「彩希姉ぇは甘いミルクのいい匂いがするんだぁ、いいだろぉ」
ボクは、意地の悪い顔でキリちゃんと継ちゃんを見て口角を上げた。
彩希姉ぇは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「皆、今回は秋の学園祭実行委員会に参加してくれてありがとう」
彩希姉ぇは、深々と頭を下げた。
「いやぁ、彩希先輩の為なら何でもしますじゃん!」
琉空ちゃんがおちゃらけると、キリちゃんと継ちゃんがじろりと睨みつけた。
彩希姉ぇの横にいるのは
桃ちゃんが
「あら、お姉様。彩希先輩の横にいるとブスが余計に目立つわよ。キモっ……まじで」
クスクスと笑う桃ちゃんに、カチンときたちぃちゃんが言い返す。
「皆、ソイツと居ると馬鹿が伝染るよ。お前は帰れよ、クソガキがっ」
一同冷や汗……。
彩希姉ぇがちぃちゃんを……ボクが桃ちゃんを
「そうそう、先輩方聞いて下さいよ!菜々花が夕べ、大変な目に!」
琉空ちゃんが、ひと通り説明すると、二人に動画を見せた。
彩希姉ぇは口元に手を当て、小刻みに震えた。
「菜々ちゃん何もされなかった?大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。ボク逃げ足速いもん!」
「良かった……」
彩希姉ぇはボクをギュッと抱きしめた。
「Dr.ペスト……ウチのジャージか。確かに不気味だね」
ちぃちゃんも、不安そうに爪を噛んだ。
「そうだ!コミュニケーションアプリでグループを作らない?何かあれば、皆 同時に情報交換出来るし。グループ名は学園祭実行委員会でどうかしら?」
彩希姉ぇの提案に、皆はすぐに同意しグルコミュ(グループコミュニケーション)が作られた。
「よし、とりあえず放課後に皆で警察に行こう。動画を提出して、菜々花の話をしないと」
「キリちゃんありがとう、皆もありがとう」
ボクは、皆がいるだけで安心できた。
ボクにとってかけがえの無い最高の仲間たちだ。
「ところで……
彩希姉ぇが、腫れ物に触るように……申し訳なさげな目で、ボクの顔をチラ見して小声で質問した。
ボクは、ピクリと反応して下を向いてしまった。
「あー、えっと、そうでしたね!後でオレから話してみます」
慌ててキリちゃんが答えたところで、お昼時間終了のチャイムが鳴った。
「じゃあ、また放課後に!」
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