第7話 孤独

 5時限目終わりの休み時間、2年C組の教室は生徒達の声で賑わっていた。


 窓際の一番後ろの席で、椅子に浅く腰掛け、机の上で足を組んでいるのが関瑠羽太せきるうただ。


 銀髪のアシメで左耳にはシルバーのピアス、クッキリとした二重目。仏頂面でスマートフォンを弄っている。


 クラスメイトは怖くて誰も近づかないし、瑠羽太からも誰にも何もアクションは起こさない、孤立した存在だ。


 教室の入口に現れたのは乙羽野おとわのキリト。


「あっ?乙羽野君だ」


「キャー、カッコイイ」

「なんでウチのクラスに…?」

 女子生徒達はざわつき始めた。


「瑠羽太、ちょっといいか?」

 キリトが声をかける。


「え?ちょっと……関君と知り合いなのかしら?」

「嘘っ、あんなヤンキーと?」

「どういう関係……?」

 女子生徒達は益々ますますざわついた。


 瑠羽太は気だるそうに立ち上がると、かかとを潰した上履きで地面を擦り歩き、キリトの元へゆっくりと近寄った。


 瑠羽太は顔を近づけ、下から睨みつけた。

「何か用か……?」


 周りの生徒達は、見て見ぬふりで、二人に会話に耳だけを傾けている。


 キリトは人差し指で眼鏡をなおすと、

「単刀直入に聞く。何故、オレ達と距離を置く?」


 瑠羽太は、一瞬口ごもった。


「あ?俺の勝手だべ?……なんか悪い?」


 瑠羽太は、怪訝けげんそうな表情を見せた。


彩希さき先輩に誘われたと思うが、学園祭の実行委員頼まれたろ?……あと、今 大変な事が起きている。お前に助けて欲しい。菜々花が……」


 瑠羽太は、キリトの話を遮るように

「うるせぇよっ!委員は断る、お前らとつるむ気はねぇ、二度と来るな!」

 瑠羽太は、教室中に響き渡るほど声荒らげた。


 周りの生徒達は、皆 ビクつき怯えた。


 瑠羽太は、西日の照りつける廊下へ出ると、溢れる生徒達の波へと足を運んだ。まるでモーゼの十戒のように、人波が瑠羽太の道を作った。


「瑠羽太!……また来る」


 瑠羽太は、その言葉に舌打ちをして振り向きもしなかった。


 キリトは苦笑いを浮かべ、自分の教室へと戻った。


 関瑠羽太せきるうた九条菜々花くじょうななかは同じ中学校の出身で、交際はしていないも、お互いに気のある存在だ。また、ひとつ上の学年の國枝彩希くにえださきと仲が良く、いつも三人で遊んでいた。


 彩希が今の高校へ入学すると、後を追うように二人もここへ入学した。


 他のメンバーとは、ここで知り合い仲良くなり、8人で遊ぶようになった。


 ところが、半年くらい経った頃、瑠羽太は皆と少しずつ離れていった。


 この学校のボス的存在のえいと関わるようになっていった頃からだ。


 元々ヤンチャだった瑠羽太は目をつけられたのだろう。


 それからは人が変わったように笑顔を見せなくなり、いつも眉間に皺を寄せていた。そして、皆を無視するようになった。


 二年生になると、他のメンバーも部活やアルバイトで忙しくなり、遊ぶ時間は減っていた。


 唯一昼休憩の時に、オープンテラス席に集まるのが定番になっていた。


 彩希が生徒会長になり、学園祭実行委員会が発足されると、団結力のある皆を招集した。


 そして、今に至る。


 










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