第45話 行方不明
『おかけになった電話番号は……』
るぅちゃん……どうして繋がらないの?
RRRRR……
そこへ
「はい。キリちゃんから電話をくれるなんて珍しいね?」
ボクは、平静を装い電話に出た。
「菜々花……声、震えてるぞ。繋がらないんだろ?瑠羽太と……」
キリちゃんは、基本的に自分の事には鈍感だけど、
「アハハッ、バレた?さすがだねぇキリちゃん」
ボクは、そんなキリちゃんの電話に張り詰めていた気持ちが少しだけ緩み、ベッドの上に仰向けに倒れ込んだ。
「まさかとは思ったが、菜々花も繋がらないのか……。今日の夕方に帰る予定だよね?きっとスマホが壊れたんだよ。一緒に
ボクは、キリちゃんが……仲間達がいる事がとても心強かった。
この中にDr.ペストがいるなんて有り得ない。
ボクの考察が間違えているに違いない!
夕方、キリちゃんとボクは、るぅちゃんが到着する時間に合わせて向ケ丘駅に来ていた。
「きっと、疲れてた顔で電車から降りてくるよ。笑ってやろうな、菜々花」
キリちゃんは、沢山の女性を魅了するその
ボクは、鼻の頭に皺を作り微笑み返した。
程なくして、るぅちゃんが乗っている(はず)の電車が到着した。
空のオレンジ色が車体に反射して、思わず目を細めた。
手で日陰を作り、目を開いたら るぅちゃんが降りてくるに違いない。
キリちゃんとボクは、開いた扉に目をやった。
しかし、るぅちゃんが降りてくることは無かった。
「きっと次の電車だよ」
キリちゃんは、ボクが肩を落とすのを遮るように、言葉を掛けてきた。
「うん」
ボクは、不安を隠すように作り笑顔で返事をした。
向ケ丘は田舎なので、次の電車が来るまで30分は掛かる。
ボク達はベンチに座った。
すると、キリちゃんが缶コーヒーを買ってきてくれた。
キリちゃんは同級生だけど、ボクにとって友達と言うよりお兄さんのような存在だ。
いつだってボクの事を気遣ってくれる。
るぅちゃんとボクが喧嘩をしても、いつもボクの方についてくれるのだ。
しかし、自分自身の恋愛には奥手で、
十中八九、両想いなのになぁ……。
長い長い30分が過ぎた……
ボク達は、固唾を飲んで開いた扉を見つめた。
るぅちゃんの姿は見えない。
発車チャイムが鳴り、扉が閉まる。
きっと寝過ごしそうになって、飛び出してくる。
しかし、誰も飛び出しては来なかった。
「菜々花、『Cafeるしえる』のマスターなら分かるかも知れない。行こう」
キリちゃんは、ボクに落ち込む時間を与えなかった。
るぅちゃんが乗っていなかった時の、次の行動を考えていたのだろう。
ボク達は、『Cafeるしえる』へ足を運んだ。
カランカランッ
「いらっしゃ……ああ、確か乙羽野君に九条さん?」
まあ、前回お邪魔した時の印象が強すぎたのもあるだろうけど……。
「実は、瑠羽太と連絡が付かないんです。駅に迎えにも行ってきたのですが……。それで、
キリちゃんが、理由を説明してくれた。
「……キミ達もか」
濱田さんは、苦笑いを浮かべた。
やはり、るぅちゃんと連絡が付かないとの事だった。
東京にいるマスターの井上さんに連絡を入れたが、昨夜別れたので分からないとの事らしかった。
流石のキリちゃんも、もうボクをフォロー出来なかった。
一体、るぅちゃんはどこに行ったのか?何をしているのか?何か事件に巻き込まれたのか?
ボクの頭の中は、不安に支配された。
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