第30話 キミを呼び出した訳

「うおぉぉあっ!!」


 九条菜々花ボクは、ゴルフクラブをDr.ペストの頭をめがけて大きく振りかざした。


 Dr.ペストは、それをするりとかわし、半歩下がると嘲笑あざわらうかのように手招きする。


 今度は横から振るが当然のように躱される。

 しかし、ボクは手を休めない。


 上から下、下から上、右から左、左から右……


 とにかく、縦横無尽じゅうおうむじんに振り回した。


「はぁ……はぁ……」

 ボクの息は激しく上がる。


 Dr.ペストは、ふわりと軽やかに噴水の縁に乗ると、またスマホで文字を打ち始めた。


 ピロリン♪と着信音がなる。


『もう疲れているようだけど、大丈夫かい?それに、私は関瑠羽太せきるうたより強いよ?!』


 ボクは、スマホをしまうとまた攻撃に出る。


 ボクがゴルフクラブを振り回すたびに、Dr.ペストは避けては下がる、避けては下がる……


 気が付けば、噴水から離れ欅の生い茂るエリアまで来ていた。


 地面は枯れ葉で埋もれている。


 ボクは、肩で息をしながら更にゴルフクラブを振りかざした。


 カツンッ!


 なんと、Dr.ペストはナイフの短い|でゴルフクラブの中心を正確に捕らえボクの動きを止めた。


 そして、ナイフを素早くスライドさせると、驚くべきことに、ゴルフクラブの柄が真っ二つに割れた。


 間を開けず、Dr.ペストはボクの腹部に綺麗な回し蹴りを食らわせた。


 ボクは、後ろからワイヤーで引っ張られたかのように吹き飛ばされた。


「うっ……ううっ……ゴホッゴホッ……」


 Dr.ペストは、うずくまり荒い息遣いのボクにゆっくりと近づいて来る。


「ボクを桃ちゃんのように殺すのかい?!……やってみろ!命乞いなどしないぞ!」


 Dr.ペストは、呆れたように手のひらを上に向ける仕草をした。


『菜々花、君のことは殺さない……今日は、友達を殺されて落ち込む君の顔を見に来ただけさw』


 ボクは、息を整えヤツに目を合わせると、ニヤリと口角を上げた……


「やっぱりそうか!キミは、ボクを殺さないと思ってたよ。殺す気ならとっくにやってるはずだ!それに……ボクも復讐しに来たわけではないもんね」


「復讐……では無い?」


 Dr.ペストの動きがピタリと止まった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る