3
「あれはノクターンだよ」
廊下を歩いていた僕とすれ違ったときに清香ちゃんが僕に教えてくれた。智美と清香ちゃんは仲が良い。心配してくれたのだろうか。おかげで僕はあの曲の名前を知ることができた。学校帰りにCDショップによってショパンのノクターンのCDを買った。家に帰ってそのCDを聞くとすぐに、僕が知りたかった曲の名前がわかった。最初に聞こえてきた曲だから。
CDの解説を読んで、ノクターンは「夜想曲」と訳されることを知った。夜を想う曲。曲のイメージに合っている。当たり前か。ショパン「夜想曲第一番変ロ短調」がその曲の名前。
「智美も曲の名前までは知らなかったみたい」
「多分ノクターンだろうとは言ってたんだ」
ショパンのノクターンというとほとんどの人は2番の変ホ長調の曲を思い浮かべるらしい。CDの解説に書いてあった。でも僕は1番のほうが好きだ。
「いいのかい。僕なんかと帰って」
「いいのよ。智美は用事があるみたいだし」
そう言って清香ちゃんが意味ありげに笑う。そういえば僕はあの人の顔も知らないんだ。知っているのは後姿だけ。
「憧れの年上の人か」
清香ちゃんは急に立ち止まって遠くを見ている。メガネの先に何が見えるのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます