一難去ってまた一難

 列車が止まると、賑やかな御一行はゾロゾロと駅前に整列した。一狼さんは周りを見回して 1台の送迎バスに近付いて行く。

  僕は車体の名前を見てギョッとした。


「うわ〜寄りにもよってウチのホテルとは。一狼さん勘弁して欲しい……」


僕は誰にも見つからない様に、後退りしてフェードアウトしようとしたが、目敏く一狼さんに見付かりバスに押し込まれた。


「雪彦、何で逃げようとしたんだ?」


「一狼さんこそ、なぜ僕の父方の実家のホテルに予約なんかしたんです?真白の一族に顔を出す前に西園寺に行ったりしたら大変な事になりますよ」


  一狼さんの顔色がサッと変わった。どうやら気が付いたらしい。運転手に向かい1人具合が悪いので降りると声を掛けると、今度はサークルの部長に念の為に病院へ行くと言い、バスを降りようとした。


「西園寺、大丈夫か?」


  部長が心配そうに声を掛ける。運転手がパッと此方を見て、嬉しそうに叫ぶ。


「雪彦坊ちゃん! お久しぶりです」


 一狼さんと僕は、顔を見合わせ諦め顔で頷き、運転手に遅れてホテルに行くので、着くまでは雪彦が居ることは内密にと頼んだ。


「雪彦悪かったな。さぁ行こうか」


「いえ、一狼さんは少し時間を潰してからホテルに行って下さい。真白の家に行くには、ここから車で40分掛かるので」


真白からの迎えの車を待つ間、不吉な予感がしてならなかった。
















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