怪物は俺様
「私はお前など見た事も無い!」
怪物は何故か悲しげな顔で、私に語りだす。
「俺様の事を忘れたとは、情けない。レッド、それでも同族か? 日本に居る間に変わってしまったのか? 」
そう言いながら私に向かって歩いて来る。
怪物の身に纏ってる衣服は焦げ臭い匂いを放ち、皮膚は焼けただれ元の顔さえ分らない。だが、確かにその声は聴き覚えがある。
ん、 俺様? そんな風に自分の事を云う奴を私は一人しか知らない。
「もしかして、ミハイル……か? あの、俺様気質で尊大な態度が疎まれて、皆の鼻つまみ者の? 」
「お前にそこまで云われる程落ちぶれておらんわ! 」
ミハイルは激昂して怒鳴るが幸い、どんなに怒っても顔色が変わる事は無い。否、変わっても分らないと云うべきか。
「ち、近寄るな! 醜いのは嫌いだ」
ジリジリと近付いて来るミハイルに後ずさる私。その時、後から追い掛けて来た、かんなと雪彦がミハイルを見て、まるでゴキブリを見た時の様な顔をした。
「ひっどい格好ね〜これがレッドと同じ種族なの? 」
「うわ、僕も苦手です。可哀想だとは思うけど。」
「まあまあ、そんな事言わずに。取り合えず家に戻ろう、誰かに見られたらまずいしな」
一狼の言葉で我に返った私は、お客様である美咲様をすっかり忘れてた事を思い出し、駆け寄った。
首の咬み跡を見て、怒りが沸き上がるが、幸い命には別状無い様でホッと胸をなで下ろした。
「早く美咲様を介抱しなければ。一狼達は、後から来てくれ。私は飛んで帰る」
そう言って私はすっかり闇に包まれた夜の東京を羽ばたいて行った――
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