第16話 陽だまりの中で思うこと



あなたの見ている春は本物です

と思っていたい


あなたの見ている春だけが本物です

と信じていたい


あなたは

その春の中で生き

それ以外の世界は無だと知った日に


あなたの世界へ

春の風が吹いてきて

あなたの世界が広がる


思い悩むことはない

それもあなたが作った世界


暖かな春の陽射しがあなたを待っている


だから

不必要に思い悩む世界を作っちゃいけない

季節は相も変わらずに移ろい

絶対と言えるものは

季節は逆行することが無いと言うこと


真実はただ

あなたが生きているという

素晴らしい今の営みだけだということを教えてくれる


春の日のそんな思いを持ちながら歩く村には

穏やかで暖かな陽射しの下で

農家の庭に咲いたイワノプシジウムが風に吹かれて笑っている

小鳥達が一斉に降りてきて

賑やかに囀りながら小虫達を啄んでいる


向こうでは

一人の若者が軽四トラックに乗り込み

畑へと向かう


暖かな春の日に

何が育つのであろうか

畑を耕しに小さな白いトラックが走り去る

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る