第11話 一本の薔薇



少女は悩んだ挙句

プレゼント共に一通の手紙を添えることにしたが

今は後悔している


幼馴染の男性へ

今も憧れ続けている男性へ


その男性は背も高く

その心がそのまま現れているかのような優しい笑顔を持っていた


それとは逆に

3人姉妹の中でも

姉たち二人に無視されるくらいに

その少女は幼い頃から貧しさを纏ったような容姿をしていた


それでも少女は

最後の願いの如く

前日の夜の星に願いをかけて

手紙を添えて幼馴染の男性に

プレゼントを贈った


少女の後悔は

その手紙の内容は


若しも私が幼い頃

姉達からも見捨てられるくらいの容姿だったのに

あの時にくださった優しさを今もお持ちなのでしたら

お友達として

あの頃のようにお友達になってください


それだけならまだ良い


最後に付け加えられた望みを後悔していた


若しも

あの頃のように私をお友達としてお付き合いしてくださるなら

このプレゼントのお礼を

若しもお礼として何かをくださるのなら

一本だけ薔薇の花を私に贈ってください


未だ後悔の残る思いで

少女は学校から家に帰ると

制服を着替え

普段着になって

鞄から教科書を出して

その日に与えられた宿題をしようと椅子に座る


その時

呼び鈴が鳴り

共働きの両親の代わりに玄関へ行く


扉を開けると一人の大人の女性が立っていた

彼女は満面の笑顔で

花屋ですと言い

抱えきれないくらいの真っ赤な薔薇の花束を持っていた


少女はその抱えきれないくらいの花束を渡され

そして花屋の女性は言う


彼からのメッセージの言葉をいただいておりますよ


幼い頃も今も

あなたへの気持ちは変わっていません


です


それでは失礼しますと言って

花屋の女性は全てを分かっているような笑顔で去っていった


少女の姿を隠してしまうようなくらいの薔薇の花束を抱えた手のひらには

先ほどの花屋の女性が読んだメッセージカードが握られていた


3月14日の夕刻の

何処にでもある小さな街の

始まったばかりの恋の物語り

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る