二刀流のワイン飲み

出っぱなし

二刀流のワイン飲み

 二刀流とは、両手にそれぞれ刀もしくは剣を持って、攻守をおこなう技術の総称である。

 現在は、アメリカ大リーグで大活躍中の大谷翔平選手の影響もあるのか、様々な分野で幅広く使わるようになった。


 酒飲みの分野で言えば、酒と甘味の両方を好む人のことを指す。


 僕もその広い意味で捉えれば二刀流だ。

 もちろん性的な方面ではない。

 酒飲み、ワイン飲みとしては、だ。


 僕は拙作『神の血に溺れる』で様々な国を旅した話とワイン、料理について語っている。

 その話の中で本筋には関係がないので、まだ語っていないし、これからも語ることはない話がある。

 そのことでワイン大国イタリア人の話に少し触れる。


 僕は『神の血に溺れる』第1部は、1年かけてフランスで過ごした日々をざっくりとではあるが語り尽くした。

 その後のオーストラリア編、現在のニュージーランド編があり、その間4年ほど時間が過ぎている。

 

 その間にワインショップで働いたが、実は収穫時期に1ヶ月ほど休暇を取り、イタリアに行ったことがあった。

 かなり贅沢な働き方をしたと今では思う。


 僕はイタリア、ローマに降り立ち、一泊してフィレンツェ郊外のワイナリーにお世話になることになっていた。

 WWOOF、国際的な農業ボランティアの団体を利用し、宿泊費と食費を出して貰う代わりに収穫だけ手伝うというものだ。


 ローマでは、安宿に泊まろうと思ったが発見できず、夜中に到着したのでどうしようかと思い、始発までの間ローマ駅で野宿をしたことは愛嬌だ。

 

 始発が動き出すと僕はフィレンツェ行きの電車に飛び乗る。

 夢現にフィレンツェに到着、ピサ行きの支線に乗り換え、目的地のサンミニャートという田舎町に到着した。

 少し待つとワイナリーから車でお迎えが到着した。


 そうして、ブドウ畑とオリーブの木々に囲まれた山間にやってきたわけだ。

 そこにはすでにアメリカ人の若い旅人たちが来ていた。


 他にも給料をもらって働く正社員のようなイタリア人たちも働いていた。

 その中の一人がワイナリーの責任者の幼馴染が、週末になると僕たちを色々な場所に連れ出してくれた。


 フィレンツェ観光、キャンティ・クラシコの有名ワイナリーなどにも連れて行ってもらい、休みも満喫できたというわけだ。


 平日はブドウを収穫したりして働き、昼休憩にはワインを飲みながら食事だ。

 イタリアのワイナリーに住み込みなのでワインを昼から晩まで飲んでいた。

 そして、食後は必ずジェラートだ。


 ワイナリーは街からは離れているので、スーパーで買わないとアイスはない。

 そのため、暗くなろうとも夜は必ず2、3km離れた近くの村にジェラートを食べに行った。

 イタリア人の食事はジェラートがないと終わらないからだ。

 

 ちなみに、フィレンツェのジェラート屋では、仕事帰りらしきパリッとしたオーダーメイドらしきスーツを着こなしたビジネスマンの紳士ですら列に並び、ジェラートを手に持って歩いていた。


 ワイン飲みであり、ジェラート(甘味)好き、実にイタリア人らしい生活だった。

 こんな二刀流も良いかなと思う。

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