双子の二刀流剣客は古墳時代に散った
碧美安紗奈
双子の二刀流剣客は古墳時代に散った
障がいを持って生まれた彼、いや、彼らを目にしたとき、両親は戦慄した。
背中合わせに融合した双子。未来では、シャム双生児とされる存在だった。
しかし時は古墳時代。融合を解く手術も不可能、彼らを支援する体制も整ってはいなかった。
――ところが、彼らは諦めなかった。
「「父上、母上、おらたちは強く生きてみせる!」」
そう宣言し、鍛練を積んだのだ。くっついた身体というハンデを乗り越えようと。
まだ日本が一つの国でもなかった、混沌としていた時代。偏見や迫害、特異な身体に負けず、双子で息を合わせることで独自の強さを身に付けたのである。
そうすればもう、手が四本、足が四本ある一人の人間のようなものであった。
「おまえたちがいると助かるよ」
「もうこの辺りじゃ敵うものなしだね」
いつしか、そんな風に人々は称えるようになった。
くっついた身体を使いこなすことで、双子は、単純に仕事が二倍できる一人の人材のようになったのだ。中でも、彼らは武術に才能を開花させていた。
やがて辿り着いた境地が二刀流だった。いや、二人で二本ずつ太刀を持てば、それは実質四刀流であった。
双子のどちらも二刀流を極め、やがては弓も使いこなし、たちまち彼らは一帯で最強の戦士へと成長したのである。
しかし不安定な時代に平和は長続きしなかった。
後に日本を平定するヤマト王権の勢力は、彼らの土地にも攻めてきた。
「「みなの衆。おらたちは最後まで戦うぞ!」」
そう告げて、双子は真っ向から敵軍を迎え撃った。
四刀に弓をも使いこなし、たった二人で多くの兵をなぎ倒した彼ら。けれども、決着はいずれつく。
大群の前に最期は双子も力尽き、
それでも、その勇猛果敢な戦い振りはヤマト王権にも伝説の鬼神として神話に残されるほどだった。
今日でも、ある地方では未だ毒龍退治や寺院の開基となった豪族であると、英雄的にまつられてもいるという。
名を、
伝説かはたまた空想か、遠いどこかで話される物語である。
双子の二刀流剣客は古墳時代に散った 碧美安紗奈 @aoasa
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