第3話 レクリオ村の優しい人達
ギダユウさんの案内でレクリオ村の中を歩く事数分、一軒の家の前に到着した。
「ここがミランダさん家だよ、それにしてもこの村何も無いでしょ、まあ静かな村だからね。」
「はあ、長閑でいいじゃないですか。俺はこういうのいいと思いますよ、しかし、流石に電気も無いと不便ではありませんか? 国に言って電線を引いて貰えばいいじゃないですか。」
「でんき? でんせん? ヨシダさんが何言ってるのかわからないよ、ヨシダさんの国ではそういうのがあるのかい?」
「ええ、まあ、大概どの国にもあると思いますけど。」
どういう事だ? 電気も知らないって事があるのか? そんな筈無いよな。
だけどギダユウさんは知らないみたいだし、ああそうか、発電機でもあるのかな。だから電柱が無いのかもしれない。
俺はミランダさん宅の玄関のドアをノックする。
「すみません、服を借りた者ですけど~。」
しばらくして、一人の女性の声が聞こえてきた。
「どうぞ~、鍵は掛かってませんから、お入り下さい。」
ドアを開けて様子を伺う、外から見て思ったが、立派な木造建築のお家だ、中も広そうだ。
部屋の中央に一人の女性が椅子に座っていた、あの人がミランダさんかな? まだ若いじゃないか、30代位かな。
部屋の中に居た女性が、俺の姿を見て体が震えている、顔の表情は驚きに満ちている、何だろうか?
「あ!? あなたっ!?」
「え?」
女性は俺の事を誰かと見間違えているみたいだ。
「あ、あの~。」
「あ、ごめんなさい、主人の服を着た人がやって来たものですから、主人と勘違いしてしまいましたわ。」
「そうでしたか、あの~、そのご主人はどちらに?」
「3年前に亡くなりましたわ、………………モンスターに襲われて。」
モンスターだって? ふ~む、冗談を言っている雰囲気でもないよな、まあ、後でギダユウさんに聞いてみよう。
「そうでしたか、余計な事を聞いてしまったようですね、すいません。」
「いえ、いいんですよ、もう3年も経っていますから、それよりその服が役に立ったみたいで何よりですわ。」
「あ、そうでした、この服をお貸し頂きありがとうございます、お陰で村に入る事ができました。」
俺は頭を下げ、お礼を言う。
「亡くなった主人の物ですが、あなたの体形に合う服でよかったですね。本当に、主人と同じ体格をしてらっしゃるようで。」
女性の目からは、うっすらと涙目が伺える、3年前にご主人を亡くされて寂しいのかもしれないな、まだ愛しているのだろう。
その服を貸して貰っている訳だから、ご主人に感謝しないとな。
「ところで、あなたのお名前は何と言うんですか?」
「あ、はい、俺の名前は吉田と申します。」
「ヨシダさんね、私の名はミランダと言います、他に娘が一人います、今は出かけているようですけど。」
なんと、子持ちの母親だったか、とても若く見える奥さんだな。
「ミランダさん、改めて服をお貸し下さりありがとうございます。」
「いいんですよ、この村の男衆に主人の服が合う人がいなかったので、捨てるに捨てきれず、どうしようと思っていたところです。ヨシダさん、良ければその服を貰っては下さいませんか、どうせもう着る人がいませんでしたから。」
「いや、しかし、宜しいのですか?」
「ええ、構いませんよ。」
なんて優しい女性なんだろう、お言葉に甘えるしか今は出来ない。
「ありがとうございます、正直に申しまして着る服がなかったので、困っていたところでした、本当に感謝致します。」
「それに、ヨシダさん、あなた足が素足ではないですか、主人が使っていたサンダルも差し上げますよ、どうぞ遠慮なさらずに貰ってやって下さい。」
「すみません、ミランダさん、何から何まで。」
ミランダさんは玄関の近くに置いてある一つのサンダルを俺に渡してきた。
縄を編みこんで作られたサンダルだった、有り難い、裸足では歩く時ちょっと痛かったところだ。
俺はその場でサンダルを履き、紐を足に結ぶ、これで外を歩いても痛くないだろう。ホント、感謝だな。
「ところでヨシダさん、泊る所はあるのですか? この村宿屋なんかございませんよ。」
「あ、そうなのですか、俺はどうせ無一文ですし、宿屋にも泊まれないです。」
そこでギダユウさんがこう提案してきた。
「だったらヨシダさん、村長の家に厄介になる、ってのはどうかな? ヨシダさんが何処から来た人なのかもわからないんじゃ、しばらくの間、村に滞在する可能性だってあるだろう、それに村長は元冒険者だった人だよ、何か解るかもしれないだろ。」
「そうですねえ、俺は元居た国に帰りたい訳ですので、その情報を集めたいと考えています。」
「まあ、そうだったのですか、ヨシダさん、もし宜しければうちに泊っていかれませんか? 夫に先立たれてからというもの、私と娘の二人だけではこの家は広いと感じていたところです、いつまでも居ていいのですよ、どうですか? ヨシダさん。」
「え!? それは、有り難いのですが、宜しいのですか? ご迷惑ではありませんか。」
「いいんですよ、丁度男手が欲しいと思っていたところですから、遠慮なさらずに、それに夫のベットもありますから。」
う~む、どうしよう、確かに泊る所のあては今の俺には無い、お金も無いし。
この申し出は有り難く受けるべきか、しかし、本当にこの奥さんは親切だな、今の俺にとっては凄く有り難い話だ。
村長さんのところに泊れるとはまだ決まった訳でもないし、よし、ミランダさん家にご厄介になろう。日本に何時帰れるかわからない訳だし。
「ミランダさん、一つ、宜しくお願い致します、ご厄介になります。」
「ええ、その方がいいですよ、っと言う事はお夕食をいつもより多めに作らないといけませんわね。」
「すいません、有難う御座いますミランダさん、何から何まで。」
ギダユウさんがこちらに声を掛けた。
「話は纏まったみたいだな、それじゃあヨシダさんはミランダさんとこで滞在する、って事でいいんだな。」
「はい。」
「よし、それじゃあ次は村長の所に行って、ヨシダさんの事を詳しく聞きたいところだな、ヨシダさんは突然村の入り口の近くにパンツ一丁で現れた訳だからな、俺達はまだヨシダさんの事をよく知らない、まずは村長に話をしに行くべきだな。」
「はい、わかりました。」
ギダユウさんがミランダさんの方を向く。
「それじゃあミランダさん、俺達はこれで。」
「はい、村長さんの所でお話が終わったら、ウチに来て下さいね、ヨシダさん。」
「はい、ミランダさん、お世話になります。」
俺とギダユウさんはミランダさんの家を後にして、村の中を歩き出した。
次の目的はこのレクリオ村の村長さんのところに行って、俺の事を話す事になった。
だが、その前にギダユウさんに聞きたい事がある。歩きながら聞いてみた。
「ギダユウさん、ミランダさんの旦那さんが亡くなった原因って?」
「ああ、その話か、モンスターだよ、ミランダさんのご主人はモンスターにやられちまったのさ………。」
モンスターか、まるでロールプレイングゲームみたいな事を言うんだな。本当にモンスターなんているのかな?
「どんなモンスターですか?」
「ゴブリンだよ。」
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