第2話 異世界転移、そして第一村人
目の前が突然眩しくなったかと思ったら、また直ぐに収まったみたいだ。
顔を両手で覆い、視界が塞がれている。ゆっくりと手を下ろし、視界を確保し、辺りを見渡す。
「な、何だ? ここ………。」
妙に明るい、夜だった筈なのに? 太陽が中天に差し掛かっている。
見渡すとあたり一面草原だった、草や葉っぱ、花などが咲いている。
目の前には集落だろうか、村の様な感じの建物群が見える。俺は草原に胡坐をかいて座っていた。
「い、一体、何が起きたってんだ? 俺は確かに自分の部屋に居た筈なんだが。」
周りを見てもここは屋外だった、草原に俺は座っている。
「どういう事だ? さっぱり訳がわからない、俺はさっきまでゲームをしていた筈なのだが、テレビの画面が光輝いたと思ったら眩しくて目を瞑った、そこまでは覚えている。問題はその後、何故俺は屋外に? いつの間に外に出たんだ? こんな事は有り得ない。」
暫くの間混乱していると、目の前の村から一人の男がこちらに駆け寄ってきた。
「おーい! そこのあんた! 大丈夫か?」
俺はその場で立ち上がり、こちらへと駆け寄ってくる男に返事をする。
「え? どうかしましたか?」
「どうかしましたかじゃないよ! あんたこそどうしたの? パンツ一丁じゃないか。」
言われて視線を下に移す、あ! 本当だ、俺パンツ一丁だ。何も服を着ていない。
どうなってんだ? 部屋着を着ていた筈なんだけど、道理で肌寒いと思ったよ。
「タチの悪い山賊にでも身包み剥がされたのかね?」
「え!? 山賊? この辺りには山賊なんてのが居るのですか?」
「ああ、居るよ、だから気を付けなきゃならんのだよ。」
「そういった人は警察に任せる方がいいのではないですか?」
「けいさつ? なんだい、それは?」
何? 警察を知らないだと、どう言う事だろう? まさか、相当な田舎なのかな、ここって。だけど幾らなんでも警察ぐらいは知っているよな。
「え~と、お巡りさんとかって居ませんか?」
「おまわりさん? ああ! 衛兵の事かい、そういうのは極、偶に来る事があるくらいさ、ここは田舎の村だからね、だから俺達みたいな村人が自警団をやっているのさ。」
「自警団ですか。」
だからなのか、腰のところに皮の鞘を提げた鉄の剣みたいなので武装している、まるでファンタジーの世界みたいだ。
「ギダユウの兄貴! どうしたんですかい?」
村人と話していると、もう一人、年若い男がやって来た。
「おう、ラッシャー、いいところへ来たな、ちょっくらミランダさんとこへひとっ走り行ってきて男物の服を借りてきてくれ、この人の体形と同じだった筈だ。」
「へい、わかりやした、それじゃあひとっ走り行ってきやす。」
ラッシャーと呼ばれていた男は、村の奥の方へと駆けて行った。
「すまんね、あんたみたいな怪しい奴は村の中に入れてやる事は出来ないんでね。」
「あ、すいません、自己紹介がまだでしたね、私は吉田と言います。」
俺は目の前の村人に一礼し、挨拶をした。
「ヨシダさんね、俺の名はギダユウ、この村の自警団を纏めている者だ、すまんがパンツ一丁の男を村に入れてやる事は出来ない、村の中には歳若い
「あ、いえ、何故だかわからないのですが、気が付いたらここに居ました。」
「気が付いたら? って事はダンジョンのテレポートトラップにでも引っ掛ったのかね?」
「はあ、テレポートトラップですか?」
この人は何を言っているんだ? ダンジョンとかテレポートトラップとか、ゲーム用語を言われてもな。
「あの~、ここは一体どの辺りになりましょうか?」
「ん? ここはレクリオ村だよ、知らなかったのかい?」
レクリオ村? はて? 聞いたこと無いな、日本では無いよな。
するとここは海外なのか!? おいおい、冗談だろ、ここは一体どこよ。
「え~と、ギダユウさん、ここはどの国になりますか?」
「え? なんだ、そんな事も知らずにここに居るのか、ここはアース王国だよ、そして、この村がアース王国内にあるレクリオ村さ、ようこそレクリオ村へ。」
「ど、どうも。」
アース王国? はて? それも聞いた事無いな、ヨーロッパあたりかな?
王国って事は王様が居るって訳だよな、ふ~む、国の代表とかじゃないのかな? 政治家とか。
「ヨシダさんは何やってる人?」
「あ、はい、建設作業員です、っと言っても小さな現場ばかりですけどね。」
「ほ~う、職人かい、山賊とかじゃなくて良かったと思うよ、もし山賊ならあんたの事を切らなきゃならなかった所だ。」
おいおい、物騒だな、幾ら何でもただの自警団が人切りはいかんよ、いや、誰でもだけど。
そうこう話ていると、ラッシャーさんが服を持ってこちらにやって来た。
「兄貴、ミランダさんとこで服を借りてきやしたぜ。」
「おう、ご苦労、ヨシダさん、取り合えずこの服を着てくれ。」
ラッシャーさんが俺に服を渡してきた、上着にズボンだ。俺はそれを受け取る。
「どうも。」
俺は早速服を着る、うん、サイズはぴったりだ。俺の体形に合う服だな、有り難い。
「おかげ様で落ち着きました、どうもありがとうございます。」
「礼なら後でミランダさんに言っておいてくれ、とにかく、これで村に入れてやれるよ、ヨシダさん、面倒事は起こさないでくれよな、この村は小さな村だからね。」
「はい、気を付けます。」
「さあ、レクリオ村に入って、外はモンスターでいっぱいだからな。」
「ど、どうも。」
まただ、またゲームみたいな事を言い出したぞ、モンスターって何さ?
俺はギダユウさんに促されて、村の中に入る。
レクリオ村は周りを動物避けかなにかの為なのか、柵でぐるりと囲まれているみたいだ。
村の中も舗装されていない、土が剥き出しの道で続いている。
家の一軒一軒の間隔が広い、各家では農作物でも育てているのか、畑が沢山ある、農家ってやつかな。
それにしても何か違和感があるのだが、なんだろう?
周りを見渡す、ああ、そうか! 電柱が一つも無いんだ。だから違和感があったのか。
と言う事は、このレクリオ村は電気が来てないって事なのか? とんでもない田舎へやって来てしまったみたいだ。
「ギダユウさん、村に入れて貰えたのは有り難いのですが、俺はどうしたら?」
「ん? そうさな、まずはミランダさんの所へ行って服のお礼だろ、その後は村長にでも話を聞きにいったらどうだい。」
なるほど、まずは服のお礼だよな、当たり前か。ミランダさんには感謝しないとな。
「それでは、そのミランダさんの家を教えて頂けませんか。」
「いいよいいよ、どうせ暇だし、案内しますよ。」
「すみません、助かります、ギダユウさん。」
「っと言う訳でラッシャー、俺の代わりに村の門番を頼めるか?」
「へい、いいですよ。」
「それじゃあ、行きますか、ヨシダさん。」
「はい。」
俺はギダユウさんの案内でレクリオ村の中を歩く、まずはミランダさん家に向かう。
きちんとお礼を言わなくちゃな。
レクリオ村は、とても長閑な感じのする村だった。
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