第4話 村長さんと会話
「ミランダさんのご主人は、モンスターのゴブリンにやられちまったのさ。」
レクリオ村の村長の元へ行こうと、歩きながらギダユウさんに聞いてみた。
するとこの様な答えが返ってきた。モンスター? ゴブリン?
いや、ゴブリンぐらいは知っている、ロールプレイングゲーム等で出てくるモンスターの一つの種類だ。
いや、そうじゃなく、なんでそんなゲームかアニメみたいな事を言うのだろう。
そもそも、この世界にモンスターなんて居るわけないじゃないか。野生動物ぐらいだろう、居たとしても。
「ギダユウさん、まるでゲームみたいな事を言うんですね、ゴブリンなんて居る訳ないじゃないですか。」
すると突然、ギダユウさんが怖い顔になり、俺にキツイ声で怒鳴り散らしてきた。
「ヨシダさん! 何言ってんの! モンスターは居るよ、確実にね! それをなんだい! ゲームって! こっちは命懸けで自警団をやってんだよ! 遊びじゃないんだよ! 村に毎年のようにモンスター被害がでているんだよ、今年に入ってもう二件の問題が生じているんだよ! 特にねヨシダさん、ゴブリンってのは一番タチが悪いモンスターでね、見回りが終わる夜中に畑に忍び込んで作物を荒らしていくんだよ。」
「す、すいません、俺、そんなつもりじゃ………。」
この剣幕、ただ事じゃない。
え!? モンスターって本当に居るの、ここは一体何処だよ。
「とにかくヨシダさん、あまりミランダさんのご家族の前でモンスターとかゴブリンの話はしない方がいいからね、世話になるなら気を付けてよ。」
「は、はい、気を付けます。」
ギダユウさんの真剣な表情を見ると、とても冗談を言っている感じではない。
本当にミランダさんの家に厄介になるなら気を付けよう。
「すいませんでした、俺、モンスターとかに今まで会った事もなかったので。」
「モンスターに出会った事もない!? ホントかいヨシダさん、それが本当だったらヨシダさんは貴族様か何かなのかい? 今までどうやってここまで来たんだい?」
「さあ? 俺もわかりません、何ででしょうね。」
「モンスターに出会った事も無いなんて人を、俺は見た事も聞いた事も無いよ。」
「そうなのですか? しかし事実ですよ、俺は本当にモンスターとかに出会った事は無いですよ。」
「へ~、居るんだね、そんな人。村に居れば嫌でも目にするけどね。」
ふーむ、モンスターか、ホント、ここは一体何処なのかな?
俺の知っている国じゃないのかもしれない。いや、そもそもこの村の事も知らなかった、ここは日本じゃない事だけは確かなようだけど。
そうこう歩いていると、一軒の大きな建物の前にやって来た。一階建ての木造建築だ、土地が広いのか、随分と大きな家だ。庭みたいなところもある。
「さあ、着いたよ、ここがこの村の村長さん家だよ。」
「随分立派なお家ですね、中も広そうだ。」
「まあ、村一番の大きな建物だからね。そこを村長さん家にしたのさ、さあ、ヨシダさん、行こう。」
「はい。」
ギダユウさんを先頭にして、村長さん家にお邪魔する。
門から玄関までが少し歩く距離だ。玄関に到着してギダユウさんが扉を開ける。
「村長さ~ん、いるか~い。」
大声で村長さんを呼ぶ、ノックとかしても聞こえないぐらいに中は広い感じだ。
声を出して呼ぶ方が手っ取り早いのだろう。しばらくして、一人のご年配のお爺さんが出てきた。ゆっくりとした足取りだ。
「ほーーい、
「村長さん、相変わらず元気だねえ。」
「なんじゃ、誰かと思ったらギダユウの悪ガキじゃないか。」
「悪ガキはよしてくれよ、俺もう成人して何年か経っているよ。それよりも、村長さんにお客さんだよ。」
「何? 客じゃと?」
言われて俺は一歩前に出て、村長さんに挨拶をする。
「どうも、初めまして、吉田と言う者ですけど。」
「ふむ、ヨシダさんね、見た所随分と軽装みたいじゃが、町からでも来なさったかの?」
「あ、いえ、実は村長さんに相談したいと思い、ここにやって来ました。」
ギダユウさんが更に補足説明をする。
「村長さん、実はこの人、村の入り口近くの草原にいきなり現れたんだよ、しかもパンツ一丁で。」
「何? いきなり現れたじゃと? ふ~む、ダンジョンのテレポートトラップにでも引っ掛かったのかのう。」
「俺も最初はそれを疑ったさ、だけど実際のところどうなんだい? ヨシダさん。」
「は、はあ、それが………自分の部屋に居た筈なんですけど、気が付いたらこの村の近くに居まして、一体何が何やら。」
「ふ~む、わしも昔は冒険者をしとりましての、大概の事はわかっておったつもりなのじゃが、わしの知る限り、やはりテレポートトラップあたりに引っ掛かったぐらいしか思い付かんぞい、後は魔法使いが使う転移魔法の「テレポート」の魔法ぐらいじゃわい。」
「そうか、村長さんでもわからないのかい、困ったな~、ヨシダさん、あんたは自分の国に帰りたいんだろう?」
「ええ、そうです、日本という国なんですけど。」
「にほん? さ~てのう、聞いた事も無い国の名じゃのう。」
何!? 日本を知らないだって、日本の知名度ってそんなに低いのかな?
結構知ってる人がいると思っていたのにな。
「わしの経験からすると、ダンジョンのテレポートトラップに引っ掛かると大概の場合、そのダンジョンの中のどこかには転移するものじゃがのう。」
「すみません、俺はダンジョンとかに居た訳ではありません、本当に自分の部屋に居ただけなんです。」
「ふ~む、そうか、すまんがわしではお力になれそうに無いわい。」
「そうですか。」
「すまんの。」
「いえ。」
困ったなあ、そうなってくると、次はどうすればいいのやら。
あ! そうだ、この国の日本大使館ってないかな? そこに行けば何か解るかもしれない、うまくいけば日本に帰れるかもしれない。
「村長さん、この国に日本大使館ってありませんか?」
「にほん大使館? さてのう、聞いた事も無い国の大使館などあったかのう? 一応このアース王国の王都に行けば異国の大使館ぐらいはあるとは思うがのう。」
「王都ですか、ここから近いのですか?」
「いや、王都は馬車で五日は掛かるぞい。」
馬車? 車じゃないのか? まあ、自動車なんて結構値が張る物だしな、皆が持っている訳でもないか。
それにしても馬車って、昔の交通手段じゃあるまいし。ここってそんなに田舎なのかな。
さて、どうしたもんかと色々考えていたら、村長さんが俺に提案してきた。
「そうじゃ! ヨシダさん、クノックスの町に行かれてはどうじゃ、その町の近くの塔にルカインっと言う賢者様が住んでいらっしゃる筈じゃ、賢者様に相談してはどうかのう。」
「賢者様? ですか、ああ、賢人がいるのですね、わかりました、ルカインさんに会いにクノックスという町に行ってみようと思います。」
「うむ、賢者様ならばきっと良い知恵をお貸し下さるじゃろうて、クノックスの町はここからそう遠くない、歩いて行ける距離じゃわい。」
「わかりました、明日、早速行ってみます。」
「うむ、それが良い、今日はもう日も傾いてきた、今夜はこの村でゆっくりなさるがええ、泊る所はあるのかの?」
「あ、はい、ミランダさんのお家にご厄介になるつもりです。」
「そうか、あいわかった、では明日、ヨシダさんの問題が解決する事を祈っておりますじゃ。」
「ありがとうございます、村長さん。」
俺とギダユウさんは村長宅を後にした、外に出るともう夕方だった、なんだか疲れちゃったな、一休みしたい。
「それじゃあヨシダさん、俺はこれで失礼するよ、村の見回りの仕事がまだあるからね。」
「あ、はい、ギダユウさん、色々とありがとうございました。」
「なーに、気にしなさんな、それじゃあ。」
ギダユウさんは村の中を歩いて行ってしまった。さてと、俺も今日は疲れたな、腹も減ってきたし、そろそろミランダさん家に行こうかな。
俺は村の中を歩き出して、ミランダさんのお家へ向けて歩くのだった。
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