第8話:島の人々は
少しの間があって。
アニエスが内心抱いた感情を知ってか知らずか、フィーネは全く違う話題を切り出す。
「ここの人たち、そんなに長生きしないみたいだね」
「私達基準の五十歳ほどで歴史上の最長寿となると、レティシア大陸の人間の平均寿命と比べて半分くらい……まあ、短いわね」
「それも普通の人間よりも強い体を持つ魔人なのに。一族で呪いにかかっている感じはしないんだけど」
「私の印象も同じ。今日会った人はみんな健康体だし、流れてきた思念からして外敵もいなさそう。だとすれば、この島の一族の身体はそもそも短命にできている事になる。フィーの知識で何か心当たりはある?」
「厳しい環境だったら短命になるだろうけど、穏やかなこの島でみんな魔人なのに寿命が短めみたいだしなー。強いて言うなら、そういうデザインなのかも?」
「……それは、星を創った際にこの生態を意図的に用意した可能性があるって事?」
「んー。始まりの時点でそうだった可能性もあるけど、この星の場合はたぶん違うんじゃないかなぁ。今なんでこうなっているのかは知らないけど、元はボクらがいた星と大差ない環境だったと思うよ」
フィーネの言葉を咀嚼するためにアニエスは考え込む。
だが、彼女の直感はよく当たるものの必ず的中するわけでもない。
現状の根拠や情報が無い状態で憶測を重ねても無駄だと、すぐに思考を打ち切った。
「それから気になったんだけど。この町の人たち、誰も魔法を使ってなかったよね?」
「そうね。ユニコーンが素材にされないで悠々と暮らしている時点でもしかしてとは思っていたけど。少なくとも今日会ったこの島の人達の中に魔力を扱える者は一人もいなかった」
「魔人にも種類があるよね。オリジナルのヒトに魔法で別の生き物の因子が組み込まれて変化したか」
「それか、他の生き物に人間の因子を組み込んだかね。この島の人達は前者だと思う。手の形なんかは私達と同じだったし、思念に知能の高い魔獣独特の感触がしないから」
「それじゃあ先祖はアニエスと同じ人間だったとして、どうして今のこの島の人達はみんながみんな魔人になっているんだろうね? 同じ姿の魔人同士で子作りしてきたってことでしょ?」
「……それは、歴史を紐解かない事には判らないわね」
そう言って、アニエスは懐から小さな宝玉を取り出した。
「ここで解析するの?」
アニエスはしばらくの間輝く球体を眺め、思い直したように首を振る。
今の自分の技術では不可能だと理解していた。
それよりも現地にいる間は他の手段でこの星の事を知ろうと考える。
「フィー、念のため一度島全体の魔力の流れを調べてもらってもいい?」
「えー」
「お願い。今度何かお礼するから」
「いいよ。じゃあ、また飛ぶ時に付き合ってね」
「…………」
アニエスは自ら墓穴を掘った。
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