第11話
翌朝、蓮は震えていた。
(うぅ、寒気がする‥‥)
布団に包まり、スマホを握りしめていた。
(この番号誰だろ)
スマホにかけた覚えのない番号が残っている。蓮はかけてみる事にした。
プルルルル
「もしもーし。やっぱり、かけてくると思ってたよ」
その声に聞き覚えがあった蓮は急いで電話を切る。
(あの男だ、俺に薬を‥‥)
ㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡ
(あー生き返るー)
気付いた時にはもう、その男の部屋にいた蓮。
「俺の声聞いて、その時の感覚思い出したんでしょ?走ってきたからビックリしたよー」
男は言った。
蓮は再び薬に手を出してしまった。
(少しだけならいいよね、前もやめれたし、今回だってすぐやめれば大丈夫だ)
(そう言えばこの男俺の事知ってるって言ってたなぁ、でもそんな事どうでもいいや)
その頃アイビーは潮田といた。
「潮田さん、どんな感じですか?」
「あったよ、というか思い出した」
「何をですか?」
「ところでアイビーは何が知りたいの?」
「何が知りたい、そう言えばそれが分かったところで自分に何が出来るんだろ」
アイビーは考えていた。
「とにかく、前言った事覚えてるよね?」
「はい」
「その組織は俺が調べてた時から薬に手を出してた、今まで手を替え品を替えやってきたんだと思う。最近の事も少し調べてみたんだけど、その、あんずって子も直接売ったりしてるみたい」
「やっぱり」
「その子自体は薬に手を出してはなさそうなんだけど、まぁ小遣い稼ぎってとこだろ」
「それで蓮に何も言えなかったんだな」
「言えるわけないだろうね」
「そのままを伝えてもいいと思います?」
「その方が蓮君の為だとは思うけどね」
「ですよね、ありがとうございます」
蓮に電話をかけるアイビー。
「蓮、今どこだ?」
「今は、ちょっと野暮用」
「何言ってんだよ、ちょっと事務所こい」
「わかった」
蓮が事務所に来る。
「きたか、丁度今は潮田さんと自分しかいねーからここで話すぞ」
「うん」
「ん?お前調子悪いのか?」
「全然そんな事ないよ」
「そうか、まぁ座れ」
椅子に腰掛ける蓮とアイビーの横で潮田は見守る。
「すごく言いにくいんだけど、あんずって子売人だぞ」
「えっ?!」
蓮は驚きが隠せない。
「こっちで色々調べて分かった事だ。知らない男と会ってたのも、薬絡みだと思う」
「あんずさん、それで言えなかったんだ」
「だと思う。でも結局は本人から本当の事聞くしかないぞ、お前がこの事知ってたらおかしいからな」
「そうだよね。でも言ってくれないよきっと」
「でも好きなんだろ?」
「俺浮かれすぎてただけなのかもしれない。絶対離れないって言ったけど、正直今の気持ちは分からない」
「は?一体誰の為に教えてやってるとおもってんだよ!」
「仕方ないじゃん!あんずさん秘密多すぎるし、人間不信になりそうだよ!」
「お前がどうしてもって言うからこっちは忙しい合間縫って動いてやってんだぞ!」
「なんで俺が責められるんだよ!」
「お前がその子の事好きだからって、こんなに胸が苦しくなるなんて思わなかったって言ってたから、応援してやろうと思えたのに‥‥」
「ちょっといいかな」
潮田が割って入る。
「蓮君ね、自分勝手だと思わない?」
「仕方ないじゃないですか。こうなったのは、誰のせいでもないんですから」
「アイビーはね、蓮君の為に身を削ってる、わかる?」
「はい」
「それってすごい事なんだよ、簡単には出来ない。当たり前じゃないんだよ」
「分かってます」
「蓮君がその子と仲良くしてる間アイビーがどんな気持ちだったか考えた事ある?」
「‥‥‥」
「蓮君は自分の事しか考えてない、甘えすぎだよ」
「甘えてるのは分かってます、アイビーが俺の頼みを断れないのも知ってます」
「今の蓮君があるのはアイビーのおかげだと思うよ」
蓮は今までの事を反省していた。
「アイビー、ごめん。それとありがとう」
「まぁ分かってくれたならいいけど」
アイビーは潮田に感謝していた。
「アイビー、潮田さん。俺、これからは自分で解決するよ。もう頼らない」
「また極端だけど、蓮君がどうしようもなくなったら俺に相談しておいで」
「はい、ありがとうございます」
「アイビー、今度からは滅多な事がない限り連絡しないから」
「お、おう」
そして、蓮は颯爽と出て行った。
「俺、蓮君の事変えちゃった?」
「そんなすぐに変わんないでしょ」
「そっか!ハハハ」
「でも、嬉しかったです。自分の為にズバッと言ってくれて。潮田さんが言ってくれなかったら、永遠に言えなかったと思います」
「言う時は言わないと、相手の為にも」
「はい」
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