第22話 別れ22p

 占い師が戻って来た。

「どうぞ飲んで」

 占い師は、俺の目の前に湯気の立つ青い陶磁のカップを置いた。

 良い香りが漂う。

 何のお茶だろうか。

 そう言えば、喉が渇く。

 俺は、そっとカップを手に取ると、お茶をゆっくり啜った。

「どう?」

 占い師に訊かれて、俺は「美味いです」と素直に答えた。

「リラックス効果のあるお茶よ。飲むと落ち着くわ」

 占い師は自分もお茶を啜りながら言った。

 なるほど、そう言えば何だかリラックスして来た様な。

 俺はしばらくお茶を啜った。

 占い師も無言でお茶を飲んでいる。

 お茶の力は凄く、体の底から温まって来た。

 俺は、そう言えばと思い出す。

 俺はこの占い師とのんびりお茶を飲みに来た訳では無い。

「あの、話って、何っすか?」

 カップで手を温めながら訊いた。

 この占い師は俺に話しがある、と言った。

 一体何の話しがあると言うのか。

「そうだったわね」

 占い師は、カップを置いて姿勢を正した。

「お友達……多田野さんは本当に残念な事でした。心からお悔やみ申し上げます」

「俺に言われても」

「そうよね」

 占い師は眉を少し下げた。

「此処へ占いに来た時に、彼の運勢を見た時に感じたの。彼には死神が憑りついていたのよ、だから、彼の死は逃れられない運命だったのよ」

「死神?」

「ええ、そうよ」

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