第19話 別れ19p
アパートに帰る気にはなれずに俺の足は駅からどんどん離れていく。
俺は何処に向かっているんだろう。
この先に何があるんだろう。
そんな疑問に軽口を漏らしてくれるやつはもういない。
「季夜……」
名前を呼んでも虚しいだけだった。
俺をあざ笑うかのように降る雨は止みそうにない。
夜になっても俺はまだ街をふらついていた。
街は夜でも、きらきらと明るかった。
その明かりは、びしょ濡れの俺を余計惨めにするだけだ。
光の中であぶれた俺を街行く人々は眉を顰め怪訝な顔で見る。
あんなに濡れて……と言う呟きさえ聞こえた。
「くそっ」
丁度良く落ちていた空き缶を思いっきり蹴り飛ばす。
鬱陶しい視線が離れていく。
まだ帰りたくない。
そんな気持ちだけが俺を動かした。
気が付けば、俺は、あの占いの館の前にいた。
季夜と来た占いの館。
きらきらと輝く雨降りの夜の街を歩いて辿り着いた占いの館のドアノブには、Closeの札がぶら下がっていた。
それにも構わずにドアノブを回すと、ドアが開いた。
俺は、ためらう事はせずに中へ入る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます