第14話 別れ14p

 手に持ったスマートフォンに目を向ければチャットの通知を知らせている。

 季夜からで、月が綺麗だ、とか書いてあった。

 何だか温かい気持になる。

 さて、このメッセージの返信をどうしようか。




 一週間後。

 季夜が死んだ。




 季夜の通夜の帰り。

 俺は、ふらふらと危ない足取りで、一人で歩いていた。

 まだ季夜が死んだ事が信じられなくて、ぼうっとして、おかしな気分だった。

 交通事故。

 季夜の乗った自転車が、信号無視の車に衝突されて季夜は転倒し、頭を強く打って死んだ。

 突然告げられた季夜の死に、俺も大学の仲間も戸惑った。

 季夜の葬儀が行われるのは季夜の地元でだった。

 俺は大学の仲間と新幹線に乗り、季夜の通夜に出向いた。

 季夜の実家は嘘みたいな田舎だった。

 電車を乗り継いで下りた駅の目の前に大きな山が……。

 山は、もう少し待てば緑に包まれるだろう。

 息を吸うと、何とも清々しい匂いが鼻から入って来る。

 柔らかく、落ち着く匂いだった。

 何処かで嗅いだ事のある匂いだ、と思ったら、季夜から香る匂いだ、と思った。

 ああっ、と俺はため息を付く。

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