第3話 別れ3p

「遅いぞ」

 先に店に入っていた季夜が俺に向かって言う。

その顔は不満そうでは無く微笑んでいた。

「おう」

 悪びれた顔を見せて俺は言った。

 俺達二人は受付を済ませると、壁際に並べられたパイプ椅子に座り、雑談をしながら順番を待った。

 占いの館は意外に繁盛しているようで、待ち時間は三十分。

 席は全部埋まっていた。

 俺達以外、客は全員女だった。

 彼女達は、ちらちらと季夜の顔を盗み見ている。

 季夜を見ながら何か囁き合っている連中までいる。

 あいつらの考えている事は分かっている。

 どうせ、季夜を見てイケメンだとか色めき立っているんだろう。

 けっ。

「何を不貞腐れてるんだ、住原」

「別に」

 けっ。




 三十分どころか一時間待って貧乏ゆすりが止まらなくなった頃、ようやく俺と季夜の名前が呼ばれた。

 待たされて機嫌の悪い俺はむすっとした顔で季夜と共に占いブースの赤色のさらりとした手ざわりのカーテンを捲る。

カーテンの中には黒いワンピースを着た黒髪の若い女の占い師が紫色の布を被せた細長いテーブルの前に静かに着いていた。

「お待たせいたしました。そちらの席に座って下さい」

 占い師は微笑み、そう言って彼女の目の前にある二つの空いたパイプ椅子を手で示す。

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