第3話

 翌日、チャイムが鳴り、いつもよりゆっくり校門へ向かった、早く行ってしまうとがっついているようで見苦しい。ここはスマートに、尚且つ宮下瑠美ちゃんと俺をくっつけようと企む二組のカップルの策略も知らないふりをしなければならない。


 計画的とはいえ緊張しない訳はない、入学当初からずっと付き合いたいと思っている相手に告白させようとしているのだから。

 飛び出しそうな心臓を抑えなから、その時を待つ。



「あれ? 安田じゃん」



 期待していた声とは違う声が耳に入る。振り向くと、そこにはクラスで一番のギャル、佐々波アンナが一人でいた。



「あ、ああ佐々波さんか」


「お前一人? なんで帰んねぇの?」


「あ、いや、帰るよ」


「じゃあさ、一緒に帰ろうよ」



 なんだこの恋人のような会話は、たが俺は短いスカートや、いい香りのしそうな長い髪が気になってしまう。



「え? いいの?」


「いいよー、あたしも一人、淋しかったんだ」



 せっかくの好意なのだ、無駄にしてはならない。



「じゃあ」と、うなずくと、佐々波さんは突然腕を組んできた、



「んふふー、いこ」



 柑橘系の甘い香りと、腕に当たる胸の感触を、俺は二度と忘れないだろう。

 心の中で皆に謝らなければならない、だが遅くなった瑠美ちゃんだって悪くないことはない。そうやって自分で自分を言い聞かせた。


 そう、だから今日の俺は、ギャルの佐々波さんと、下校するのだ――――

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