第2話

 泰生と永山さんが付き合って一週間、再度俺は放課後の教室で参考書を開いてた。



「何やってんだよ、将斗」


「ん? ああ健太か」



 背中に声を聞き、振り返ると、そこには健太と、溝口由依みぞぐちゆいが立っていた。



「お前らこそ……って、まさか」



 二人は手を繋いでいる。



「の、まさかだよ、サンキューな、将斗」


「本当に、安田君のおかげで、私達付き合うことが出来たんだから」


「「ねー」」



 二人は顔を見合わせて微笑み合っている。


 まあこの二人は少し場を作ればくっつくことは予想がついていた。泰生と永山さんが付き合ったことをきっかけに、女子グループと俺達は話す機会も増え、急激に近くなった。だから、二人を結ぶように差し向けることも簡単だ。

 同時に俺の標的となっている、宮下瑠美みやしたるみちゃんとも接近できて一石二鳥というものだ。



「ところでさ、安田君はどんな子がタイプなの?」



 俺の机を囲むように二人に挟まれる。

 溝口さん、ついにその質問を出しましたね「第二布石、完了」と、心の中で呟いた。



「え? あ、いや……き、急に言われても」


「なんだよ将斗、お前おとなしい系の子がタイプって、前から言ってたじゃん」


「え? あ、まあ、そうだけど」


「じゃあさ、瑠美とかどう? あの子うちらの中じゃおとなしい系だと思うよ」



 ここで「はい、お願いします」とは言ってはいけない、それではあからさますぎて、計画がバレてしまう。


「そ、そんな、ど、どうかな……ハハハ」


「付き合ってみたら?」


「いや、でも彼女にもタイプがあるし、俺みたいな男は……」


「大丈夫だって、瑠美には私から言っておくから」


「そうそう、明日の放課後、校門で待ってろよ」



 健太と溝口さんは俺の肩を叩くと、顔を合わせ俺を見てニヤリと笑うと、教室を出た。



 参考書を閉じ、うつむいたまま、口角を上げる「笑いたいのは、こっちだよ」言葉に出たのかわからない程小さく言った。

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