4杯目~エネルギッシュガール~

~前杯までのあらすじ~

武器を求めて武器屋を訪れた勇者ハング・オーバーマン。

酒を飲みながら接客するクレイジーな看板娘ヨエル・ヨッターナは、ハングのことを勇者と中々信じようとしない。そんな彼女に対し、ハングは渾身の「ブレイブ土下座」を敢行!みごと信頼を勝ち取り、無償で鋼の剣をゲットすることに成功する。

無事目的を果たした彼は、今度は宿屋を求め、再び歩みはじめるのであった。



「オイッス!そこの人~、ちょっといいかい?」


ハングは宿屋を探していると突然女性に声をかけられる。


「えっ?僕ですか?」


ハングはその声の主の方を振り返る。


「自己紹介しよう!アタイはハツラツパッションがとってもエネルギッシュな道具屋の看板娘、タクア・ノミスさ!!アンタが噂の勇者ハング・オーバーマン?」


「はい、僕がその噂(?)の勇者ハング・オーバーマンですけど…この村に来て間もないのにな〜。あ〜僕ってそんなに有名人かな?いや〜困ったな〜。


「…っん?ああっ!さっきツマミが大騒ぎしながら、村中の人に言いまわっていたからね~。もうこの村で有名人だよアンタッ!」


(うっ、あの子余計なことを…。…いやでも、別に僕の素性が知れたところでデメリットは特にないし…、まぁいいかな?)


「てゆーかアンタもスゴいね~~~♪、本当にダ・イ・タ・ンッ!出会って5秒でツマミをその下の立派な性剣エクスカリバーで貫いて、ステキな性女にしたらしいじゃないの~。ヤるね~♪………でもウソだよねえ?大丈夫、知ってるから、うん、わかってるから、そんなこと、…絶対するはずないもんね。大丈夫、信じてるから……」


(あっ…前言撤回、デメリットしかないかも。…って貫いてないから!)


「いや実はね、アタイのところにもさっきツマミのヤツがスゴく興奮した様子で来てさ~。『はぁはぁはぁ……、勇者、性剣、エクスカリバー、ナる、性女、ツマミ、

クる、アナタも、ハヤく!』みたいな感じでね~。いや、前々から『妄想癖がある少し変わった子だなぁ~』ぐらいには思ってはいたのよ!でも…でもね、正直今回のことは共有できない。だって、スゴく怖かったのアタイ…」


彼女をよく見ると首に絞められたような痕がある。


「え、えっ!?……その首の痕は?」


「あっ!これかい?これはツマミのヤツが強引にアタイをどこかに連れて行こうと

するもんだからさ、『い、痛い!おねがい!乱暴はやめてぇぇぇっ!!』って女の子らしい可愛い悲鳴を意識しながらね、必死に抵抗したのさ…。そしたらね、

そしたらアイツ、逆上して首締めてきたのさ…。多分その時のだね」


「えっ!?ちょっ!だ、大丈夫だったんですか!?」


衝撃的な謎展開に、思考が中々追いつかない我らが勇者ハング・オーバーマン。


「んっ?ああ大丈夫!…だったとは少し言えないかな~。アンラッキーなことに

アタイね、その時オシッコ我慢しててさ。力が抜けて……その、床がね、大変なことになっちゃった…」


顔を赤らめながら「てへへ♪」と笑うタクア。


「そんな凶暴な狂犬娘を野放しには出来ないよ!今ツマミちゃんは何処にいるの?

僕が責任をもって無力化してくるから!!」


「あっ!大丈夫大丈夫!アタイ、こう見えて荒事にはだいぶ慣れてるからさ!一瞬の隙を突いて、渾身の殺人キックで目を攻撃して、ツマミが『目がアっ!ツマミの目がぁぁぁぁぁッ!!』って叫びながら、両目おさえて苦しみ悶えているところに、渾身の殺人パンチを腹にお見舞い、動くなったところに渾身のトドメの一撃を、頭プレゼントしてあげたわ!!まぁそしたらね、白目むきながら口から泡吹いてぶっ倒れたよ~。あはは、ちょ~ウケる♪」


「いやいや全然笑えないからさ!てか殺意剥き出し過ぎだよ!何そのエグい連続

攻撃はさっ!!」


「アタイたち~、普段はチョー仲良しなのよお♪この間も三人で集まってクッキー

焼いたの!その後は楽しく女子会♪恋バナに花が咲いたよ!!」


「頼むから僕の話をちゃんと聞いてッ!!!(迫真)」


「何よ~、ちゃんと聞いてるわよ~。ダイジョビダイジョビ!これでリセットされて元のツマミに戻るから!安心して…、ねっ♪」


イマイチ納得出来そうで出来ないハングに対し、タクアは話題を変えてくる。


「ところでアンタが持ってる鋼の剣『鉄也さん』よね?ヨエルの元カレの」


「て、鉄也!?この鋼の剣にそんな名前が…てか鋼の剣なのに鉄也か、…なんだろう、色々とツッコミどころがあるような…」


驚愕の事実に動揺を隠せないハング。


「そうそう、なんでも『ウチを満足させられる偉大な勇者グレート』だそうよ。

村の人たちからは戦闘のプロ(意味深)なんて呼ばれてたりもするわね」


(な、なんだそりゃあ~……)


ハングは青ざめながら、身体の底から込み上げてくる嫌悪感を必死に押さえる。


「でもそんな後生大事にしていたモノを、アンタにタダで渡すなんてね・・・。あの飲んだくれのクレイジーサイコパス女が、まさか他人のためにそこまでするだなんて…これは事件よ、もう大事件だわ!流石は勇者!!ますます気に入ったわ!!!……ホントにステキだよ」 


「あのさ、君たち絶対仲悪いよね?普段お互いマウント取り合ったりしてない?

絶対陰口とか言ってそうだね…っていうか今言ってるしね、うん」


「まぁそんなしょーもないことさ、もうどうだっていいじゃん!とりあえず今日は『挨拶だけ』しとこうと思ってね!はい、コレあげる♪」


そう言ってタクアは、丈夫そうな大きな袋をハングに渡す。


「えっと、コレは?」


「見ての通りうちの店の商品の詰め合わせさ!きっと役に立つと思うよ!あと宿屋はその突き当たりの角を曲がったところだよ!頑張ってね♪…そうそう、実はさアタイ、結構名の知れた『情報屋』もやってるんだ…。だからさ、…まぁ困った時はいつでも会いに来てよ!!じゃあまったね~♪……応援してるからね」


そう言い残し去っていくタクア。


大量のアイテムと宿屋の情報を得たハングは、宿屋へと向かった。(つづく)




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