3杯目~クレイジーヨエル~
~前杯までのあらすじ~
伝説級の魔酒「魔王殺し」を飲んで意識を失ったハング・オーバーマンは広い草原にいた。しかもなぜか全裸で…。
乱暴された形跡がないことに安堵し彼は、服と装備を求めて近くの村を訪れる。
防具屋の看板娘ツマミ・サケーノにヘンタイ扱いされながらも、持ち前のブレイブ
ソウルでなんとか誤解を解き、服と装備を手に入れたハング。今度は武器を求めて武器屋を訪れることに…。
果たして彼に待ち受ける過酷な運命とは!?
勇者ハングは武器を求めて防具屋の隣にある武器屋を訪れていた。
「ウヘヘ~、どうも~どうも〜、ノーサツ☆ボディがとってもセンシティブにゃブキ屋のカンバン娘の~、ヨエル・ヨッターナちゃんで~しゅ!お客しゃま~、本日はどのようなブキをお求めですか~。ウヒヒ」
(防具屋のツマミって子もそうだったけど、なんか特徴的な自己紹介するよな~。
ここの村の人たちは、みんなこんなノリなのだろうか?)
「えーっと、ここのお店で一番高い武器って何かな?」
「一番たかいブキれすか~、一番たかいたかいは~、こちらのゴーレムブレイカーでしゅ~。お値段なんと!50000ゴ・ゴ・ゴ・ゴールドとなりま~しゅ!!」
(うっ!一応聞いてはみたけど今の手持ちの10倍の値段か…)
「えっと、じゃあ一番安い武器は何かな?実は今5000ゴールドしか手持ちがなくて・・・あはは」
「一番やしゅいブキれすか~。ウチの店は『コーキューシコウ』なんれ、一番安いブキれも10000ゴールドはしましましゅよ~。グフフ」
(10000ゴールド…仮に自分の身分を明かした上で、土下座しまくって半額にまけてもらえたとしても、せっかくもらった5000ゴールドをここで使い切るのも悪手だな。でも素手で冒険するのは心許ないし、うーん、弱ったな・・・)
「あれあれお客しゃま~、もしかひて冷やかしれすか~?ショーヒン買うつもりないらら~、おっととと、おっとと〜帰っていただけませんかに~。ウチは今忙しいんでしゅよ~。ウシシ」
そう言いながら酒ビンに口をつけ、グビグビと美味しそうに酒を飲みはじめるヨエル。
(忙しい?とてもそんな風には見えないけ…って酒クサッ!てか今、僕の目の前で堂々と飲んでるし!いや、そんなことはどうだっていい!接客マナーが最悪なクレイジーな女店員相手でも、やはりここは勇者の身分を明かして交渉してみよう!!)
「て、店員さん!急にこんなことを言っても信じてもらえないかもしれないけど、実は僕は勇者なんだ!今どうしても武器が必要で困っているんだけど、その何か武器を安く譲ってもらえないかな!?」
「ユーシャしゃま~?、お客しゃまがれすか~、にゃはは~~~?」
ヨエルはそう言ってハングのことをジッと見つめながら顔を近づけてくる。
「いや、顔近い顔近い顔近い、顔が近いってッ!!!」
「にゃははは~♪スキあり!むちゅ~~~!!」
赤面して慌てるハングの口めがけ、突然キス攻撃を仕掛かるヨエル。
「うわっ!?」
咄嗟にかわすハング。危うくファーストキスの相手が、頭のネジの外れたクレイジーな酔っぱらい女になるところであった。
「ウチが噂に聞いているユーシャしゃまとは、…ちっとイメージが違いますへ~。
こんらチューキュー冒険者しゃみたいなボーグに身を包んだ人らね~ユーシャ?
てかそんなソービで大丈夫なんれすか?伝説のショービの一つや二つ所持してないと、ちょーキビしくないれすか~?相手はあの歴代マオウの中でも、サイキョーにしてサイアク~と呼ばれている魔王ワラヨイ・カジルですよ~。ムリムリ〜!絶対ムリ〜キャハッ♪」
「ワルヨイ・カラムね!その魔王ワルヨイ・カラムと戦うために、行方不明になってしまった仲間たちと伝説装備を探さなくてはいけないんだ!だからどうか力を貸してもらえないかな!!この通り!!!」
ハングの迷いのない渾身の土下座が炸裂した。その瞬間辺りが激しく輝きだす。
「にゃ…にゃは~~~~~ッ!何の光!?」
ハングの土下座は正に勇者だからこそなせるブレイブな土下座であり、輝くその姿は正にシャイニング、「光」そのものだった。そんなハングの土下座に心を動かされたヨエルは、店の奥に行くと一本の鋼の剣を持ってきた。
「にしし、あにゃた様は間違いなくこのセカイにヘーワをもたらすお方、ひかりのユーシャ様だということがよくワカリまひたのにゃあ~♪そんなあにゃたに『ウチのカレシ』をプレゼント~!」
そう言ってヨエルは鋼の剣を手渡す。
「ありがとう!鋼の剣でも本当に助かるよ!しかもよく手入れされてるし、かなり切れ味がありそうだね!持ち手の部分もスゴくツヤツヤでテカテカしてるし、まるで新品みたいだ!んっ?……カレシ??」
「そうカレシ!あっ♪今は元カレでしゅね~!ちなみに新しいカレは、このアイスソード!ヒンヤリしていて本当にたまらネーんでしゅよ~!特にね、この持ち手の形状がでしゅね〜サイコーにいい感じにウチを~~~グヘヘ」
この言葉を聞いたハングは、一瞬で凍りついた。そして長居をしてはまずいと、礼だけを言い急いで店をあとにする。
「……とりあえず宿屋に着いたら100回ぐらいは洗おう」
ハングは手に入れた鋼の剣を複雑な顔で見つめながらそう強く誓った。
こうして装備を一式揃えたハングは宿屋を探すことに。(つづく)
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