第35話 2022年のマリリン

【マリリンside】


 最近、ガンモさんに逢えていないの。

 タイミングが悪いのか、ご主人様の配達に一緒に付いてきても不在なの。


 マリリンは、マリリンは、こんなにもガンモさんをお慕いしているのに、神様は意地悪だわ。


 そんな風に寂しく思っていたら、喫茶店『月の雫 -shizuku-』のマスターと私のご主人様が世間話をしていたら、


「よう、よう、知っているか?

 お前さんの大好きなガンモに彼女が出来たのを!」



 なっ なんですってぇー !

 少しガンモさんに似た猫がとんでもない事を言い出したわ。


「やっぱり知らなかったようだな!

 ガンモの奴も薄情だよな、こんな美犬美少女

 の彼女が居ながら浮気するなんて !


 俺が協力するから、ガンモを泥棒猫から取り戻そうぜ!

 俺の名前は、コロッケ!

 ガンモは、俺の弟だから間違いは直してやらないとな!」


 えっ、このデブ猫がガンモさんのお兄様なの?

 正直、信じたく無いけど仕方ないわね、普段は良い子の私でも手段を選んでいたら泥棒猫からガンモさんを取り返すことが出来るか分からないわ。


 私のダイナマイト・ボディーでガンモさんを取り返して見せるわ!

 取られたら取り返すだけよ!



 ♟♞♝♜♛♚



 コロッケに案内されて来たのは、ご主人様のお店『バッカス』のお得意様の料理屋さんだった。


「 この店の裏庭に住んでいる黒猫、オコゲが浮気相手だぜ!

 もしかしたら、ウシ柄のウッシーも加わってハーレムをしているかもな !」


 コロッケの言葉に居てもたっても居られなく成った私は隣の駐車場からお店の裏庭に周り込むことにしていた。


「バウ、バウ、バウーン!(ガンモさん、今 マリリンが性悪猫から取り返して、『真実の愛』を示しますわー!)」



 ♙♘♗♖♕♔


 ズボッ


 生け垣の中に顔を突っ込むと寝ているガンモさんを黒猫が毛繕いをしているのを見付けたわ。


「バウ バウ バウーン バウーン(『真実の愛』は何時も1つですわー!)」


 バリ バリ バリバリ バリバリ バリバリ


 生け垣の高さを乗り越えるより、突き破った方が早いですわー!


「ちょっと待て、マリリン ! 話せばわか………


 ドカーン !


 立ち塞がった貫禄がある猫にゃん太郎を体当たりで吹き飛ばしましたわー!

 恋する乙女は最強ですわ~。


 私が近づくと黒猫とウシ柄の猫が立ち塞がりましたわ。


「バウ バウ バウ バウ バウバウ(アンタたちが私のガンモさんをたぶかした泥棒猫ね !)」


「フー!ニャーゴォ、ニャーゴォ、ニャーゴォ(もー! もー! もー! 私は違うわよ、バカ犬!)」


「ニャー ニャァ~、フニャ~ゴ、ニャァ~(小娘こみすめの出番じゃ無いのよ、お家に帰ってご主人様にでも尻尾を振ってなさいな !)」


 まぁ まぁ まぁ、何て失礼な猫たちなのかしら ?

 これは、一刻も早くガンモさんを救い出さないと!

 私と泥棒猫が争いを始めようとしたら、ガンモさんが起きてしまったわ。


「ニャ ニャ ニャ ニャァ~ン ニャァ~ン ニャァ~ン(えっ、えっ、 一体全体、何が起こっているの…………って、マリリン ! また、脱走して来たのか?)」


 これだけ騒いでも気づかないで寝ていたなんて、流石 ガンモさんですわ。


「バウバウバウーンバウバウバウーン(ガンモさん、私と一緒に愛の逃避行ですわ~。世界の中で『愛』を叫んぶのですわ~!)」


 私とガンモさんの愛の語らいを、またしても泥棒猫たちが邪魔をしようど立ち塞がり続けていますわ。


「うにゃー、ニャァ~ フニャ~ゴ フニャ~ゴ(私達を無視するな、犬と猫は種族が違うことも判らないのバカ犬!)」


 ウシ柄の猫が下品に叫んでいるのですわ。

 早くガンモさんをお救いして、私達の愛の巣に一緒に帰るのですわ~。


 ガチャリ


 お店の裏口が開いて中から店のおっちゃんと……ご主人様!


「さあ、マリリン ! 皆様にご迷惑を御掛けしたんだ、帰るぞ!」


 ご主人様とおっちゃん、二人がかりで捕まった私に抵抗など出来ませんわ。


 ご主人様は、お店のマスターと女将さんに謝りながら私を軽トラックに閉じ込めてしまいましたわ。


「バウ バウ バウ バウーン(マリリンは、マリリンは、決してあきらめませんわー!)」


「コリャーッ、マリリン ! 帰ったら罰として、オヤツ抜きだからな !」


 ご主人様は怒っているけど、諦めたらゲームセットなのですわ~。



 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔


【コロッケside】



 兄よりモテる弟など要らぬわー!

 せっかくマリリンをそそのかしてガンモとオコゲの仲を邪魔してやろうと思ったのに役に立たない駄犬め !


 リア充なんて、ブッ潰す !



「やぁッーと見付けた、この酔っぱらい猫!

 もう、お父ちゃんがワインなんて呑ませるから !」


 洋子姉ちゃんが俺を抱える時、すでに田酔していた俺は眠ってしまったが、酔っぱらていた時の記憶が残っていた為に落ち込んでしまった。


 まだ、皆にバレていないようだけど……どうしよう?




 次回 逆襲のコロッケ …………(冗談です by作者)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る