名前は「ポーラベア」から「ポー」である
「シロクマ?」
保護犬の譲渡会で出会った白い大型犬へ、妻が反射的にそう言った。
ご縁あって迎えたその子は、暑いのが嫌いで雪が好き。耳も丸く尻尾が短い、四肢が太い。まさか本当にシロクマか?
そんな訳ないって、と妻が苦笑しながら「犬だよね」と話しかけた。
「のん」
待て、今否定しなかったか?
***
犬を飼おう。
生活が落ち着いたタイミングで妻に相談した。子供が生まれればきっと良い友達になれる、近所にドッグランがあるのだから、犬がいい。
日曜日、隣市で開催される保護犬の譲渡会を見に行くと、ミックス犬や元野犬や、飼い主に捨てられた成犬がたくさんいた。その中で目に止まったのは、サークルの中で蹲っていた白い毛玉だった。
「シロクマ?」
妻が反射的にそう言った。白い毛玉ではなく、白くてもふもふした大型犬だった。
隣のブースにいる成犬の小型犬ミックスよりも大きいが、これでまだ仔犬の月齢らしい。多頭飼育崩壊から保護された子だった。
私達夫婦は、ご縁あってその子を家族に迎えた。秋田犬やサモエドの血を引くミックス犬の雄。白くてもふもふした毛並みを持ち、穏やかな性格をしたその子は、どちらかというと犬よりもシロクマっぽかった。
暑いのが嫌いで雪が好き。雪が降れば「早く外に出してくれ」とリードを咥えて私たちを迎えに来るほど、賢い子だ。
だが、耳が丸くて小さい。ついでに、尻尾も短い。そして、犬にしては四肢も短い。
仔犬の頃はテディベアのようだと思ったが、成犬になっても短いままだった。
「まさか、本当にシロクマか?」
「そんな訳ないって。サモエド寄りなんだよ。ポーちゃんは犬だよね」
「のん」
「待て。今、否定しなかったか? 「Non」って、「いいえ」って言ったぞ!」
「ばう!」
「言ってないよ」
「言ったよ!」
名は体を表すと言うが、まさか「ポー」と名付けたからシロクマに近くなってしまったのだろうか?
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