田舎の平日昼間はテレショップばっかだな!(↑の続き)

 見慣れない女優の恋愛ドラマが放送されていた。

 未亡人と大学生の恋。忘れられない男性と真っ直ぐな眩しい熱に押され、葛藤する…彼女は決まって年齢を理由に青年の愛を否定する。

 だが、最後には受け入れて2人は結ばれた。

 彼女、何歳だと思います?なんと、42歳!

 若さの秘訣は、このコラーゲン黒酢…。


***


 またもや、平日に休みが降って来た。それなりに寝坊して用事を済ませると、やっぱり昼過ぎに暇になる。

 何気なくテレビの電源を入れると、見慣れない女優の恋愛ドラマが放送されていた。


『友子さん……好きなんです!』

『やめてよ。こんなおばさんを』


 この女優さん、見たことあるようなないような?

 どうやら、未亡人と若い大学生との恋愛ドラマのようだ。

 未亡人は亡くなった夫のことが忘れられず、大学生の告白を断り続ける。しかし、大学生は未亡人に夢中だ。

 未亡人はまだ若いだろうに。夫など忘れて新しい恋をしてもおかしくない美女だ。


『僕は諦めません。必ず、どんなに時間が経っても、友子さんを振り向かせてみせます』

『……私、どうすれば。あなたは、許してくれる? あなたを愛しているのに私、彼に恋してる』


 忘れられない男性がいるのに、若い大学生の真っ直ぐな眩しい熱に押されて葛藤に悩む。未亡人は決まって、年齢を理由に大学生の愛を拒絶するが、逆に言えば拒絶する要因が年齢しかないように見えた。

 もっと若い女の子と恋愛をしなさい。でなければ、愛する人に置いて行かれるわよ……そう語った彼女が持つ亡き夫の遺影は、彼女よりも随分と年長者と見受けられる。

 彼女は、年上の男性に恋をして置いて行かれたのだろうか?


『……良いの? 私、きっと君より先に死んじゃうよ』

『それまで、俺は友子さんを精一杯愛します。みんな必ず死ぬんですよ! いつ来る分からないその時よりも、今を大切にしてください!』


 未亡人は、大学生の腕に飛び込んだ。最後の最後に、2人は結ばれたのだ。

 つい見入ってしまった。ティッシュを手繰り寄せて鼻水を拭う。

 連ドラの再放送だろうか?


『新しい恋に走り出した友子さん。彼女、何歳だと思います? なんと、42歳! お相手とは20歳以上も離れているんです。彼女の若さの秘訣は、このコラーゲン黒酢……』


 無言でテレビを消した。新聞のテレビ欄を確認すると、やっぱりこの時間帯はテレビショッピングを放送中だった。

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