とても心当たりがある連絡だった

 先日、単身赴任が終了して再び家族と暮らせるようになった。が、妻の体調が思わしくない。

 お互い40も過ぎた、まさかの可能性もある…どうしよう、妻に先立たれたら生きていけない、悲しすぎて後追いしそう。駄目だ十代の子供が3人いる。

 病院に行った妻から連絡が来た。

『高齢出産することになった』


***


 結婚14年目。双子の長女と次女は中学2年生、長男は小学6年生。

 長男が10歳になった年に、「そろそろ子供に手がかからなくなっただろう」と、県外への出向を命じられた。子供たちに短期間の転校を強いるのは心苦しく、妻も任せろと言ってくれたので泣く泣く単身赴任を選択した。

 年に何度かの一時帰宅を経て、やっと先日、単身赴任が終了して再び家族と暮らせるようになった。が、妻の体調が思わしくない。

 お互い40も過ぎた。妻は元来健康体で、肉体的にも性格的にも実年齢より若々しいが、まさかの可能性もある……。

 頭痛や倦怠感、吐き気。まさかの大病かもしれない。考えれば考えるほど、嫌の方向へ想像力が加速する。

 どうしよう、妻に先立たれたら生きていけない。悲しすぎて後追いしそう。

 駄目だ十代の子供が3人いる。あの子たちを立派に育て上げるまで、私は死ぬことはできない。でも、妻がいない人生に泣きそうになる。

 今日、妻は病院に行っている。何度もスマホを手にして、今か今かと妻からの連絡を待った。杞憂であってくれ……妻から連絡が来た。


『高齢出産することになった』

「……え?」

『11週目だった。あの時だ』


 あの時、とは……一時帰宅した頃だ。

 あ、あれか。あの時か!


「具合が悪いならすぐに帰って寝ていろ。何か欲しい物はあるか? レモンゼリーを買っていくか?」

『お願い』

「とにかく……4人目、ありがとうございます」

『こちらこそ。がんばらせていただきます』


 妊娠中の妻が好んで食べていたレモンゼリーは、まだ売っているだろうか。

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