身長差40cmの可愛い恋人

 俺の恋人はクラスのアイドルだ。

 身長145cm小さくて可愛い。真面目にちょこまか動く姿は小動物。

 可愛い彼女を挟んで女子らが言い争いをしている。

 やっぱり王道の猫耳だろ!

 犬耳の尊さを舐めるな!

 あいつら好き勝手言いやがる。俺は我慢できずに声を上げた。

 彼女に一番似合うのはロップイヤーうさ耳だ!


***


 俺の恋人はクラスのアイドルだ。

 身長145cm、小さくて可愛い。俺は185cm、平均よりは高い。

 身長差40cmの恋人は、頭のてっぺんが俺の肩までしかない。見下ろすと旋毛が見える。抱き締めればすっぽりと腕に収まってしまう。俺の顔を見上げれば、必然的に上目遣いになってしまう。

 可愛い。

 性格は真面目で、学校では図書委員会に所属している。本を何冊も抱えて本棚を行き来し、踏み台を使ってよいしょよいしょと本を片付ける。「ちょこまか」という効果音が背景につきそうなほど、よく動き、よく働くその姿は小動物のようだ。

 物凄く可愛い。

 もう一度言う、彼女はクラスのアイドルだ。彼女は可愛いから仕方がないが、クラスメイトたちはまるで小動物のように愛でている。

 今日も今日とて、可愛い彼女を挟んで女子たちが言い争いをしていた。


「やっぱり王道の猫耳だろ!」

「犬耳の尊さを舐めるな!」


 片や猫耳カチューシャ(白猫)

 片や犬耳カチューシャ(柴犬)

 どちらが彼女に似合うかで派閥が生まれ、闘争に発展してしまった。挟まれた彼女は慌てふためいている。

 あいつら、好き勝手言いやがる。俺の恋人を巡って争いなんかしやがって……!

 俺は我慢できずに声を上げた。


「彼女に一番似合うのは、ロップイヤーうさ耳だ!」


 白ではなく、茶色が良い。

 俺がうさ耳カチューシャを高々と掲げれば、一部の奴らは歓声を上げてこちらの派閥へと裏切って来た。


「……彼が変になった」


 彼女はどのカチューシャも選んでくれなかった。

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