第9話 武闘派の侑名ちゃん

「まともな人いないね。」


「そうだね。」

(どいつもこいつも濃厚に愛し合ってやがる。)


「侑名ちゃん。北山さんがまた襲ってきたらどうするの?」


「次は気絶させる。手加減しない。」


「侑名ちゃんは武闘派なんだね。」


中庭の校庭に出てきた時に

「好きだー。」背後から変態が襲ってきた。


「邪魔!」私は走ってきた勢いを利用して草むらにぶっ飛ばした。


「侑名ちゃん。死んだらどうするの!」


「あれは人間じゃなくて知性のない動物。」


「侑名ちゃん!そんなこと言っちゃダメだよ。」


「現実を見て!あれは人間を捨てた生き物なの。」


私は考えていた…

「しかし、呪術ねぇ。結界みたいなものだったら、効果は学校に限定されるだろうし、外では普通なのかな?」


「侑名ちゃん。言葉や行動は変なのにちゃんと考えてるんだ。」

(私は依存し合う友人関係にイライラしているだけ。)


「欲望に負けた人たちを見てよ。光ちゃん。スゴく幸せそうだね。」


「うん。このままでいいんじゃないって吉田先生が言うのも一理ある。」


「それでも良いよ私は、ただあのままだと死ぬよ。あの人たち。」


「侑名ちゃん。どうしてなの?」


「色欲にまみれて死ぬまで行為をし続けるから。」


「だから、助けるの?」光ちゃんは聞いてくる。


「ただ、こんなことをした元凶をぶちのめしたい。親友や幼馴染を苦しめた罪を償ってもらう。」


「僕より男らしいね。カッコいいよ、侑名ちゃん。」

(そんなことない、無力なただの人間だよ。)



「同性愛が増える理由。分かる?光ちゃん。」


「異性が苦手だから?」


「それもあるけど、生存競争をしなくてもいい世界だからだよ。」


「無理しなくてもいいんだ。命懸けですることが無くなったからね。」


「毎日、命懸けで生きる必要が無くなった。ただ、なんとなく生きて、なんとなく仕事して、なんとなく人生を終えるんだ。」


「それって悲しくない?」


私は続けた。


「今のこの状況はある意味、救われている。なんとなくじゃなくて確実に同性愛による性的な行為という目標。やることが決まっているんだ。」


「なんとなく生きていたやつに人生の目標が決まったんだよ。」


「気を許す友人との性的な行為という目標。」


「喜怒哀楽の感情が無い世界。だから、幸せそうなんだ。」


「僕は侑名ちゃんが分からなくなる。昨日みたいに優しい所があるのに今みたいに非情な事を平然と言ってるから…。」


「人は嫌われないように本音を隠す。でも、私は言いたいこと、やりたいことを実行する。光ちゃんにも嫌われても構わない。」



階段を上がった所で、誰かが暴れている。

「光ちゃん。後ろに…。」


「うん。」


「ちょっと慎重に行くから。」光ちゃんを背後に付けたあと、争っている場合にそっと近づく。


「高橋くん!」


「ああ、侑名か。お前なら大丈夫だと思ったよ。」

(でも、ヤバいかも光ちゃんがいる。)


「ん?今川か。大丈夫だったか?」


「うん。高橋くんは?」


「俺は特に問題ない。少しだけ今川を見て胸がざわざわするだけだ。」

(変態の高橋くんは硬派で童貞の神だもんな。精神力が違うのか。)


「なんなんだ。この状況。」高橋くん、強いな。


「とりあえず、そこの図書室で話をしよう。」

 私たちは図書室に無事に到着した。

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