第4話 帰り道は板挟み状態

「侑名~!どこ~!」恵麻が呼んでいるが、侑名は返事しない。

(早く逃げないと襲われる。)


「辻占さん。こっちだよ。」今川くんが手招きしている。

「うん。」私は付いていく。


今川くんの助けでなんとか学校を脱出した。

「辻占さん、大丈夫?」


「助かった、ありがとう。」


「北山さんは辻占さんの事が好きなんだね。」


「制服交換だけであそこまで過激派に変わるとは思わなかったけど。」

(誘惑したのは私だから文句は言えないけど。)


「ごめんね。僕のために。」今川くんは申し訳なさそう。


「ううん。今川くんは悪くないよ。私が恵麻を誘惑したから。」


「北山さんに制服、返さなくてよかったかな?」今川くんが言うので、


「替えがあるはずだから心配しなくていいよ。」


「それに来週も男装で来るよ。たぶん。」

(私を手にいれるために。)


「このまま女の子の服でいたら、拓真くん好きになってくれるかな?」


「それは今川くんの努力次第だよ。」


「それじゃ今川くん。一緒に帰ろっか。」

今の彼はどう見ても美少女の高校生にしか見えない。若干、心配なので送っていこう。

しばらく二人で歩いていると、


「侑名~。」拓真が走ってこっちに来る。


「拓真、私には近寄らないでね。」


(全部のトラブルは拓真のせいだからね。)


「拓真くん。」今川くんはぼ~っと見つめている。


「そんなこと言うなよ。侑名。」

逃げようとしたときに、


「あっ!高橋くん。」

目線の先に高橋くんがいた。

ヤバい。三角関係の全員が揃ってしまった。


「どうしたんだ?三人で?」高橋くんがクールに聞いてくる。

(美少女の今川くんがいるから、内心はパニック起こしてるだろな。)


「そうだ。二人とも、今川くんを家に送っていってくれない?」


「今の彼は美少女だから心配なんだ~。」

(巻き込まれるのはごめんだ、適当な理由をつけて逃げよう。)


「ああ、構わないよ。」クールを装う高橋くん。


「高橋が言うなら俺も行くよ。」高橋くん目当ての拓真。


「ありがとう二人とも。」拓真と歩けて嬉しい今川くん。

(よし、まかせて帰ろう。)


「私は先に帰るね。それじゃ。」と言ったら。


「辻占も来いよ。お前も女の子だろ。」高橋くんが私に声を掛ける。

(変な所で男前発言しないでよ。)


「そうだな、2対2の方が自然だ。」拓真は高橋くんの意見に同調した。

(拓真は高橋くんのイエスマンだ。)


「僕も辻占さんに付いてきて欲しい。」

(好きな人の前で緊張しているのかな?)



端から見たら二組のカップルな四人はただひたすら無言で歩いていた。

(あの~三人ともだんまりはやめて欲しいんだけど。)


「なにか話そうよみんな。」私は話を切り出した。


「俺たちは普段、会話をしていないからな。」


「特に三条は女しか見ないし。」(高橋くん…正解だ。)


「俺は間違っていた。これからは男と話すべきだったんだ。」と拓真。


「えっそうなの?僕は女の子の格好をしてるから今はどっちなのかな?」


「今川は今の格好のままでいいと思うぞ。」(高橋くんは変態だもんね。)


「高橋が言うならその格好が正解だ。」

(拓真……高橋派をやめてちゃんと自分の意見を言おうよ。)


「認めてくれて嬉しいよ。」(拓真派だもんね。今川くんは。)


(仲違いせず、奇跡的に噛み合ってるよこの三人…。)


(この場に私……いらなくね?)

(もう!……早く家に帰してよ。君たち。) 


「仲良いんだから明日、三人でどっか行ったらいいじゃん。」


「例えば?」(高橋くん…それくらい考えてよ!)


「遊園地とかで、良いんじゃないの?」(もう、適当でいいよ。)


「そうだな。四人で遊園地でも行くか。」

(四人?なんで私も入ってるのよ!これ以上、巻き込まないで!)


「高橋が言うんだから行くか。四人で。」

(拓真はちゃんと自分の意見を言え!)


「四人でか~楽しみだな~。」(今川くん…。笑顔が可愛いね。)

「あっそうだ。辻占さん。お願いがあるんだ。」


「今川くん。どうしたの?」


「可愛い女の子の服を貸して欲しいんだ。」

(うん。話の流れだと、そう来るよね。)


「貸してやれよ。辻占。」(高橋!お前は見たいだけだろ!)


「そうだよ。侑名。高橋も言ってるんだし。」

(さっきからお前が一番ムカつくな。拓真。)


「ね!辻占さんお願い。」(お願いの仕方がくそかわいいな!今川くん。)


「分かりましたよ。明日、朝早めに家に来て今川くん。」


「ありがとう。辻占さん。」(激カワな姿で頼まれると断れないよ。)


「じゃ明日、10時に集合な!」


(なんでこうなった?私が悪いのか?)

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