その二刀流は俺に使うな!

西の果てのぺろ。

その二刀流は俺に使うな!

 二刀流……左右の手に一本ずつ刀を持って戦う、剣術の流派。比喩的に、酒も甘い物も好きなこと。※WEB調べ


 男子校のとある教室の放課後──


 生徒が二人、教室に残って話をしている。


 高校生活によくある光景だ。


「もうすぐ卒業か……」


 机の上に腰かけている男子生徒が、ポツンとつぶやいた。


「そう言えば、お前、進学だろ?野球推薦すげぇな」


 向かいの椅子に座ってる男子生徒が進学する友人の今後を口にした。


「ああ」


「改めてすげぇな!」


「そんな事ないさ」


「いやいや、すげぇだろ!投手と野手のどちらともで評価されたんだろ?お前は大谷翔平か!」


 男子生徒は友人にノリツッコミをする。


「そんな凄いもんじゃないって」


「それにお前、うちは男子校なのに、他の学校の女子にもモテモテだしさ。最近、彼女も出来たんだろ?大学進学の上に彼女まで出来るとか最高か!──俺の事忘れんなよ?」


 椅子に座ってる男子生徒は、自慢の友人を羨んだ。


「ははは。忘れるわけないだろ」


「なんだよ、忘れそうな反応だな。──そうだ!春休み、お前の彼女の友達紹介してくれよ!俺は地元で就職だからさ、地元に残る子がいいんだよな」


「うーん……。それは難しいかな?」


「……なんだよ!──あ、そうか!お前の彼女の高校、進学校だったっけ?逆に就職組探す方が難しいか……。すまん、確かに難しかったわ」


「いや、そういう意味じゃないよ」


 友人は男子生徒の言葉を否定した。


「なんだよ!じゃあ、就職組の俺には紹介できないって事かよ!」


 男子生徒は少し向きになって友人に言い返す。


「そういう事でもないって」


「じゃあ、どういう事だよ!」


 不貞腐れた男子生徒は口を尖らせて語気を強めた。


 一瞬の沈黙、気まずい空気が流れた。


 そして、友人は、重い口を開いた。


「……俺、お前の事が好きだから、紹介は出来ない……」


 友人の思いがけない告白にまた、一瞬の沈黙。


 告白された男子生徒は驚きのあまり、しどろもどろに答える。


「え……?どういう事……?お前……、彼女……、い、いるじゃん?……え?え?」


「俺、彼女も好きだけど、お前の事も好きなんだ!俺と付き合ってくれ!」


「えー!?──野球だけでなくそっちも二刀流かよ!──というかただの二股狙いじゃん!」


 男子生徒の必死のツッコミが二人以外、誰もいない教室に響き渡るのであった。




 この季節、どこかの教室で起きたかもしれない青春の1ページ。

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