運動も勉強もピカイチ、生徒会長でおまけに美少女。そんな全てが完璧な二刀流彼女に、「て、て手料理を、ふ、振る舞ってあげるから…………うちに来なさい?」とおうちにお招きされたんだけど…………  

さーしゅー

本編

 「て、て手料理を、ふ、振る舞ってあげるから…………うちに……きゅいなさい!」

 

 放課後、二人っきりの教室。

 夕陽のせいか、彼女、本田 愛羅あいらの頬は真っ赤に染まっている。

 

「わ、私カバン取りに行ってくるから、ここで待ってなさい! 勝手に帰ったりしないでよね!!」

 

 彼女が教室を出た後、ドタドタバタンと廊下から聞こえた。

 



 ————回想終わり————



 

「ってことがあったんだけど、どう思う?」

 

 僕は夕陽に染まる教室で、電話をしていた。彼女のドタドタ音はいまだに廊下で響いている。

 

「どうもこうもないでしょ!!」

 

 通話口から親友の叫びが聞こえる。

 

「本田 愛羅あいらってあれだろ、二刀流って呼ばれてる美少女の生徒会長だろ??」

 

「そうそう」

 

「勉強も日本語と英語の二刀流で、外国のイーラーニングを受けているって噂の彼女だろ?」

 

「それそれ」

 

「運動だってテニス部とバスケ部の二刀流って噂だろ?」

 

「そそ」

 

「さらには、生徒会長としてさまざまな学校行事を成功させる傍ら、ボランティア活動で地域貢献賞を掻っ攫ってる、内申点も二刀流って言われる彼女でしょ??」

 

「そおそお」

 

「じゃあ、残るしか無いだろ!!」

 

 親友の声は一段と大きくて、思わずスマホを耳から離す。

 僕は通話口を前に、大きく深呼吸をした。

 







「でもさ…………」

 









「彼女、包丁も二刀流ムダに二本遣いらしいんだ…………」

 










「あっ………………」

  



 通話口からの声が途切れると、途端にあたりは静かになった。

 放課後の雑踏がなんだか心地よくて、ついうっとりしてしまう。



「…………やめとく?」

 

 親友は、申し訳なさそうに、小さくつぶやく。

 

「…………うん」


「よっしゃ! じゃあ、うち来いよ! チャーハン作るぜ」


「そうこなくっちゃ! 今すぐ行くわ! 今行くわ!」

 

 僕はウキウキ気分で教室を飛び出すと、「なんでいないの!!!!!」の声を背にスキップをしながら学校を後にした。

 









 ちなみに、彼女の晩御飯は出前のピザだったらしい。


 

 







 そして、僕の晩御飯はなかった。

 

 


 おしまい

 

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運動も勉強もピカイチ、生徒会長でおまけに美少女。そんな全てが完璧な二刀流彼女に、「て、て手料理を、ふ、振る舞ってあげるから…………うちに来なさい?」とおうちにお招きされたんだけど…………   さーしゅー @sasyu34

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