第2314話 石神家 ハイスクール仁義 Ⅲ

 11時半になり、俺は学食へ行った。

 大したものは無かったが、牛丼を40食(完売)、生姜焼き定食を20食(完売)、ラーメン20杯の食券を買って注文した。

  

 「え、あんたこれどうすんの?」


 学食のおばちゃんに聞かれた。


 「全部喰いますよ」

 「あんた、何言ってんの?」

 「だから、大丈夫ですって」

 

 奥の人たちと話し合っている。


 「どっかのグループにいじめられてるの?」

 「いえ、別に」

 「部団連盟の人に言っておこうか?」

 「大丈夫ですよ」


 不審そうな顔をされたが、とにかく食べるのだと言うと用意を始めてくれた。

 部団連盟というところが、真面目な生徒を護っているらしいことが実感として分かった。

 俺は生姜焼き定食を喰いながら待っていると、他の生徒たちと一緒に子どもたちが来た。


 「タカさん!」

 「よう! 注文しといたぞ」

 「「「「ワーイ!」」」」


 みんなでガンガン食べる。

 後ろの方で牛丼と生姜焼きが無いと生徒たちが騒いでいる。

 数人がこちらへ来た。


 「おい、お前らどういうつもりだ!」

 

 身体のでかい男が怒鳴っている。

 無視して食べる。

 

 「何とか言え!」


 俺の肩を掴もうとするので、蹴り飛ばした。

 丼を抱えたままで転がった男を蹴り続ける。


 「やめてやめてやめて! すいませんっしたぁ!」

 

 周囲の人間を見回すと、俺たちから離れて行った。

 大勢の生徒たちが俺たちを見ている。

 数カ所でやけに強い眼差しを感じた。

 多分、どこかのチームに所属している連中だろう。


 全部を喰い終わり、双子がでかい紙袋から調理パンを取り出して並べた。

 こいつらも用意していたか。

 またみんなで喜んで食べていく。

 購買部も全滅かー。


 全部食べ終えて、双子が買ってきた缶コーヒーを飲みながら話し合った。


 「大体、どのチームがどこにいるって分かりましたよ」

 「そうか」


 情報収集が早い。

 ハーが説明していく。


 「《爆撃天使》は集会場ってところが溜まり場のようです」

 「あ、そこさっき行った!」

 「じゃあ、タカさん、お願いします」

 「おう」


 「《死愚魔》は視聴覚室です」

 「そこ、私行くわ」

 「じゃあ亜紀ちゃんお願いね」

 「うん」 


 「《ノスフェラトウ》は理科実験室」

 「ルーにお願いしていい?」

 「うん、分かった」

 

 「《間宮会》は間宮のいる教室です。3年2組」

 「じゃあ、私、行こうかな」

 「柳ちゃん、よろしく」

 「うん」


 「最後の《髑髏連盟》は、じゃあ私が」

 「それはどこなの?」

 「みんな知らないみたい。でも屋上とかで見たことあるって」

 「へぇー」


 とにかく、全員をぶっちめて情報を得る。

 単純なやり方だ。

 




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 午後の最後の授業は体育だった。

 柳さんのクラスと合同だ。


 「亜紀ちゃん!」


 柳さんが嬉しそうに私の傍に来る。


 「大丈夫だった?」

 「ええ、柳さんも?」

 「うん。まだ何もしてないけどね」

 「放課後からですよ」

 「そうだね!」


 男女に分かれ、女子はバレーボールだった。

 星蘭高校は女子が少ないので、6人ずつの2チームに分かれて丁度いい。

 その時、先生から通達があった。


 「放課後に、校庭で部団連盟主催のボクシング試合がある。全員参列するように」


 何のことか分からないので、先生に聞いた。


 「ああ、お前たちは今日が初めての登校だったな。とにかく行きなさい。何でも、部団連盟に逆らった白ランの男がボクシング部の部長と試合をすることになったらしい」

 「「!」」


 すぐにタカさんだと分かった。

 やっぱり早いなー!

 私と柳さんは楽しくなり、ノリノリで試合に臨んだ。

 これはもう、私たちも威厳を示さなきゃダメだろう。


 相手チームのサーブを後衛の私が受けてセンターの柳さんに渡す。

 柳さんが私にトス上げる。

 私が後ろからバックアタックを打って、後衛の顔面にぶち当てた。

 派手に後ろに吹っ飛んで大量の鼻血を出しながら倒れた。


 「大丈夫!」

 「ちょっと猫神! あんた!」

 「ワハハハハハハハ!」


 鼻血女は何とか立ち上がった。

 私がジャンピングサーブを打つ。

 轟音と共にさっきとは違う後衛の顔面に向かう。


 「キャァー!」

 

 咄嗟に両腕を顔の前に交差するが、そのまま後ろへぶっ飛ぶ。


 「ワハハハハハハハ!」

 「猫神! てめぇ!」


 今度は別な女子生徒がサーブを打つ。

 ふつー。

 相手からボールが帰って来た。

 後ろでレシーブをしたボールを柳さんが瞬時に動いて私にトスを渡す。 

 私がスパイクを打つと、ブロックした相手チームの人間がぶっ飛んでいく。


 「「ギャハハハハハハハ!」」


 そのうちブロックに飛ばなくなった。

 だから私がいいように狙い撃ちして行く。

 反応できずに顔面をボールに強打されて鼻血を流しながらぶっ飛ぶ。


 「「ギャハハハハハハハ!」」


 柳さんが高いトスを上げた。

 私が体育館の天井まで飛んでスパイクを打った。

 ボールが変形しながら相手コートに落下し、全員が破裂したボールの爆風でぶっ飛ぶ。


 「「ギャハハハハハハハ!」」


 試合が中止になった。

 早めに授業が終わり、柳さんと外にお茶を飲みに行った。

 早くタカさんの試合が見たいなー。






 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■






 ハーと離れて授業を受けるのは初めてだった。

 ちょっと違和感あるぞー。


 午後に数学の小試験があった。

 なんだこりゃ?

 三角関数だ。

 あー、そういえば小学校時代にこんなのやったなー。

 

 3分で全部書き終わり、教壇の先生に提出した。

 髪にパーマをかけた優しそうな女の先生だった。


 「もういいの?」

 「うん!」


 私の答案用紙を見て、目を見開いた。

 全問正解なのが分かっただろう。


 「教室を出ていいですかー?」

 「それはダメ。時間になるまで座ってて」

 「えー、じゃあ、答案用紙を返して下さい」

 「ええ、いいわよ」


 ヒマなので、裏面に「リーマン予想」の解き方を書いた。

 スペースが足んなくて、最初だけだった。

 まだ30分以上時間があったので、提出して寝た。


 「ね、ね、ね、猫神さん!」


 女の先生が起こしに来た。


 「こ、これって「リーマン予想」だよね!」

 「そうだよー」

 「この最初の関数はなに!」

 「ルーハー関数曲線だよー」

 「どういうものなの!」

 「うーん、一言では言えないなー」


 女の先生が大分興奮してる。


 「あなた、「リーマン予想」、あれを解けるの!」

 「もう解いてるよー」

 「!」


 放課後に職員室に来て欲しいと言われた。

 でも、その後で全校生徒がボクシングの試合を見学するように通達があった。

 女の先生が物凄く残念そうだった。

 アハハハハハ。






 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■






 午後は二時間とも自習だった。

 このクラスは結構荒れている。

 だから先生が来ないのだろうと思った。

 金髪の男が私の席に来た。


 「おい、お前結構カワイイな」

 「ん?」

 「あんだよ」


 私が興味無さそうな顔をしたので、男が睨んでいる。


 「お前、貧乏臭いな」

 「!」


 寄って来た男が私の髪を掴もうとした。


 パシン、ポキ


 「ギャァァァー!」


 右手で払って腕をへし折ってやった。

 他の男たちが席を立って近づいて来る。

 クラスにいる5人の女の子は離れてこっちを見ていた。

 この状況で薄っすらと笑ってる。

 大した根性じゃん!


 「こいつ!」

 「どうした!」


 クラス中の男たちが立ち上がって集まって来た。

 腕をへし折られた奴が呻いている。


 「何をされた!」

 「道具を持ってるか!」


 アホ過ぎて笑えた。

 一応相手を確認した。


 「お前ら、どこのチームだ?」


 「死愚魔だ!」

 「お前、終わったぞ?」

 「ここでやっちまうか?」

 「いいねぇ!」


 

 ドスドスドスドス……バキバキバキバキ……


 

 5秒で全員を潰した。


 「あー、私の担当じゃないのにー」


 5人の女子生徒が私の所へ来た。

 大笑いしている。


 「あなた! 強いのね!」

 「まーねー」

 「私、アーチェリー部なの」

 「そうなんだ」

 「ねえ、あなたうちの部に来ない?」

 「興味ないかなー」

 「空手は?」

 「いらないかなー」

 「剣道とか」

 「あ、それはちょっと興味あるかな」

 「ほんとに!」

 「でも、本格的なの知ってるしなー」


 まさか石神家本家以上ってことはないよなー。

 彼女らは部団連盟だと言った。

 だから「死愚魔」の教室でも無事なのだそうだ。

 部団連盟って結構権力あるんだなー。

 

 しきりに勧誘されている時に、担任が入って来た。


 「放課後に校庭でボクシングの試合があります。全員参加です」


 なんだろね?

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