第2294話 「カタ研」無人島サバイバル 総括

 ボリビアの《ハイヴ》を潰した後、ターナー大将たちに散々怒られ、俺と聖は「ほんとの虎の穴」で酒を飲んだ。

 その時、ターナー大将から連絡があり、「カタ研」の無人島キャンプでの騒動がロボによって一気に解決したことを聞いた。

 間もなく、救援要請に来たルーが俺たちの所へ来た。

 ターナー大将に、俺たちが戻っていることを聞いて急いで来たらしい。

 酷く慌てていたが、俺と聖の顔を見て、心底ホッとしていた。

 聖が大笑いしていた。


 「タカさん!」

 「おう、なんだよ、大変だったんだって?」


 ルーが必死に俺たちに説明した。

 大分興奮して、またいつもの相棒のハーがいないので少々分かりにくい。

 こいつらは双子で喋るのに慣れていて、交互に喋る話し方だ。

 だから一人で話すと感覚が違うらしく、分かりにくいことも多い。

 落ち着いている時には普通に話せるのだが、興奮していると途端に破綻する。

 それでも一気に説明しようとするので、怒鳴って落ち着かせた。


 「おい! 落ち着いて話せ!」


 つまみのTボーンステーキを食わせた。

 無意識にかぶりつき、むしゃむしゃ食べて行く。

 何とか落ち着いて、ルーも多少俺たちにも分かるように話し始めた。

 

 概要はターナー大将から聞いているので、実は分かっている。

 向かった無人島が、どうやら大妖魔の巣だったようだ。

 飛行艇で降りた時には気付かず、無人島に近づいてから黒いトゲに覆われた島だと分かった。

 まあ、その時点で本来は失敗なのだが。


 そして真っ先に「皇紀通信」の装置を壊され、にっちもさっちも行かなくなった。

 「花岡」が使えなくされ、子どもたちはどうしようもなくなったと思い込んだ。

 まあ、必死に気力を振り絞って絶望はしなかったようだが。


 そこから妖魔の軍勢に襲われ続け、「花岡」が効かない状況でなんとか踏ん張ったのだと。

 でも力尽きて、亜紀ちゃんも柳もルーも倒れ、絶体絶命の時にロボに助けられたということだった。


 「ロボは最初から危ないのが分かってたんだよ!」

 「なるほどな」

 

 そういえば、様子がおかしかった。

 自分を誘う柳のこと心配していたことが、今なら分かる。

 最初は妖魔の結界に閉じ込められたと考えていたようだが、精神攻撃で暗示状態だったようだ。

 途中でそれに気付いたが、暗示は自分たちで解けなかったと。


 「帰ったら、暗示にかからない方法を教えてやる」

 「そんなのがあるの!」

 「俺は柳の催眠術にかからないだろ?」

 「あ! そうだった!」


 聖が笑っていた。


 「お前ら死に掛けたのかよ」

 「そうだよ!」

 「ばぁーか!」

 「このやろう!」


 ルーが聖に殴り掛かってぶっ飛ばされた。

 一度も勝ったことが無い上に、逆上した状態で勝てるわけもない。

 そういうことが不明になるほど、ルーは興奮している。


 「早く帰ってやれ。こっちからも大勢行くんだろう?」

 「はい!」


 ルーがテーブルのつまみを口に入るだけ入れて飛び出していった。

 俺も聖も笑って見ていた。

 何があっても食欲は喪わない奴だ。


 「元気だな」

 「相当ヤバかったみたいだけどな。まあ、100点満点の10点だな」

 「あいつら、頭悪いからな」

 「そうだな」


 聖と笑った。

 聖にバカだと言われれば、あいつらも怒るかもしれない。

 でも聖は戦闘に関しては天才であり、柔軟思考が出来る。

 同じ場面になっても、俺たちであれば全く違った対応をしただろう。

 今回、子どもたちは初手から負けるように誘導されたのだ。

 そのことに全く気付かないまま、全て妖魔にしてやられた。

 唯一の評価は、根性を見せて諦めずに戦い続けたことだけだ。

 まあ、まったくの負け戦になっていったわけだが。


 霊的な感知能力の高い双子が気付かなかったのは、最初から暗示に掛けられていたのだ。

 しかも最初は精神攻撃でもない、単純な誘導だ。

 海辺の黒いトゲだけだと思い込まされ、それも簡単に排除出来ると思わされた。

 だからほとんど警戒することなく、敵陣に誘い込まれ、更に次々と誘導された。

 どの段階でも、簡単に撃破できる他愛ないものと信じ込ませ、警戒させなかった。

 その間に思考を読み取られ、「花岡」を封じられた。


 聖に子どもたちの無人島キャンプのことを話し、聖ならどういう対応を取ったか聞いてみた。


 「なんだよ、そんなことか。俺なら最初からそんな気味の悪い場所は行かねぇよ」

 「そうだよな。じゃあ、もしも作戦行動だったら?」

 「そんなもの! ヤバいかも知れない奴がいるんだ。最初から徹底的に攻撃だろうよ。気持ち悪いけど様子を見ましたなんてなぁ! アホウ以外の何物でもねぇじゃんか」

 「その通りだな」


 大笑いした。


 まさしく子どもだったのだ。

 楽しくキャンプをすることを中心にしたために何とかなるだろうと思わされ、全て後手に回って死に掛けた。

 聖にバカにされて当然だ。


 「トラ、もしかしたらそのままだったら死んでたか?」


 聖が俺に聞いて来た。

 こいつはうちの子どもたちの心配をしてくれている。

 優しい奴なのだ。


 「いや、多分最後は誰かがキレて解決したんじゃねぇかな。亜紀ちゃんか双子の誰かがな」

 「まあ、暗示を解く方法の一つだよな」

 「ああ。無我夢中で「花岡」のでかい技を試して、実際に島ごと吹っ飛ばしたかな。ロボが助けに行ったから分からんけどな」


 まだまだ子どもたちに作戦行動は任せられない。

 今度の件がいい経験になってくれれば良いのだが。


 聖と楽しく話し、少し眠ってから家に戻った。


 さて、帰ってから説教をしなければならんか。

 まったくめんどくせぇ。

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