第2286話 「カタ研」無人島サバイバル Ⅴ
前方で激しい打撃音が聞こえた。
亜紀ちゃんが戦っている!
私は森を走りながら叫んだ。
「亜紀ちゃん!」
「柳さん!」
亜紀ちゃんが複数のトゲだらけの怪物と戦っていた。
鉄の細い棒を持って、怪物に突き刺している。
棒を左手で持って、右手で腰から何かを取り出して投げた。
怪物の頭部を割った。
怪物から黒い液体が零れてくる。
「柳さん! その鉈を取って!」
「分かった!」
亜紀ちゃんは私に武器をくれたんだ。
この状況で、亜紀ちゃんは何一つ諦めてない。
流石だ!
私も力が湧いて来た。
鉈を取って、亜紀ちゃんと一緒に怪物と戦った。
怪物の動きはそれほど速くはない。
人間のスピードだ。
私たちは鍛錬を経てもっと速く動けるし反応出来る。
私は「オロチストライク」を怪物に撃ち込んだ。
「オロチストライク!」
怪物の頭が吹っ飛ぶ。
良かった、通じる!
「亜紀ちゃん! 「オロチストライク」は使えるよ!」
「分かった!」
亜紀ちゃんの判断は速かった。
すぐに両手で「オロチストライク」を怪物たちに撃って行く。
「亜紀ちゃん! ちゃんと技名を叫ばないと!」
「今は勘弁して下さい!」
ちょっと不満。
大事なことなんだけど。
私はちゃんと技名を叫びながら「オロチストライク」を撃って行く。
20体以上いた怪物がたちまちに斃されて行った。
「柳さん、独りで来たんですか!」
「うん! 亜紀ちゃんが心配で」
「もう! 無茶して!」
「ごめん! でも早く戻ろう!」
「みんなは無事ですか?」
「うん、大丈夫だよ!」
亜紀ちゃんと一緒に走った。
黒いトゲは私たちなら回避出来る。
でも、気を付けながら走った。
崖の上に戻ると、みんなは無事だった。
「亜紀ちゃん!」
「柳ちゃん!」
ルーちゃんとハーちゃんが叫んで駆け寄って来る。
「よかった! 無事だったんだね!」
「どこか怪我はない?」
「大丈夫。柳さんが来てくれて助かった! 「花岡」が使えなくなったよ!」
「うん、分かってる! 「オロチストライク」は使えるよね?」
「そう! 柳さんが教えてくれて助かったんだ!」
みんなで落ち着いて、状況を確認し合った。
亜紀ちゃんは東の方まで行って、鉄筋の建物を見つけたようだ。
「あんまり中は調べられなかった。色々資料みたいなものもあったんだけど」
「とにかく早く判断して戻ったのは良かったよ。こっちも「花岡」を試したり、「オロチストライク」は使えることを確認してから亜紀ちゃんを助けに行ったの」
「助かりました!」
「皇紀通信システム」が壊されたことを話すと、亜紀ちゃんがショックを受けていた。
「じゃあ、救援は呼べないんですね」
「ごめん。しっかり守れなくて」
「しょうがないですよ。ここはあまりにも異常です。じゃあ、これからどうしますかね」
それが問題だった。
「あのね、明後日に飛行艇が来ても、危ないかもしれないよ」
ルーちゃんが言った。
その通りだろう。
海にも黒いトゲが一杯いる。
飛行艇が襲われる可能性が高い。
「それに食糧も無いし」
「まずは水だよね。水が無いとヤバいよ」
「あ!」
亜紀ちゃんが叫んだ。
「パレボレ!」
「はい!」
「あんた、水を持って来てたよね!」
「はい! 50リットルほど!」
「ヤッタァ!」
みんなが驚いた。
亜紀ちゃんが、パレボレが万一のこともあるかとこっそり水を持って来ていたことを話した。
「それであんなに荷物が重かったんだ」
「ルーさん、ハーさん、すいません! でも、もしも万一のことがあったらって……」
ルーちゃんとハーちゃんが笑ってパレボレの頭を撫でていた。
「よくやったよ、パレボレ!」
「ありがとう! 助かったよ!」
「い、いいえ!」
これで何とかなりそうだ。
「あの」
パレボレが手を挙げた。
「なんだ?」
「実はナンも持って来たんです。バーベキューとかで挟んだりできるかなって」
亜紀ちゃんがパレボレを抱き締めた。
「お前は最高だぁー!」
「あ、あの、50枚しかないんですが」
「超サイコウだぁー!」
みんなが喜んだ。
怖いことばかりだったが、パレボレのお陰で笑うことが出来た。
パレボレがすぐにリュックを開いて水とナンをみんなに見せた。
「50枚ってことは、あと2.5日だから、一人一日一枚ちょっとあるね!」
ルーちゃんがすぐに計算する。
「一人一枚にしよう。あとは予備で」
「うんそうだね。水は1リットルで」
「十分かな」
みんなの持って来た物を出し合った。
お菓子などが結構あった!
そして坂上さんが言った。
「実はさ、釣竿を持って来たんだ。5本! 釣りをみんなで楽しもうと思ってさ!」
「坂上さんも最高!」
みんなでまた笑った。
しかもルアーだった!
エサはいらない!
すぐに坂上さんが竿の準備をし、坂上さん、私、亜紀ちゃん、上坂さん、そしてパレボレで糸を崖の上から垂らした。
「あ! なんか引っ張られます!」
5分後にパレボレが叫んだ。
「パレボレ! 超々サイコー!」
亜紀ちゃんが嬉しそうに叫ぶ。
ハーちゃんが手伝いに行く。
「そっとリールを巻いて! ゆっくりね!」
「はい!」
坂上さんも壇之浦君に竿を任せて駆け寄る。
「ハーちゃん、タモを用意して!」
「はい!」
「よし、海面から上がったぞ! そのままリールをどんどん巻いて!」
「は、はい!」
パレボレが緊張しながらリールを回していく。
みんなが集まって来る。
なんか黒いものが上がって来た。
ハーちゃんがタモでキャッチする。
「「「「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」」」」
タモを地面に置いてみんなが見た。
黒い魚のようなものだったが、全身に3ミリの太さの小さな腕が生えていた。
「ナンダコレ」
亜紀ちゃんが火掻き棒の先でつついた。
キショォォォーーーー!
魚が大きな悲鳴を挙げた。
「「「「「「「「「「「「「「ギャァァァァーーーー!」」」」」」」」」」」」」」
亜紀ちゃんが火掻き棒で頭を刺した。
「食べない方がいいね」
「そうだね」
他に透明な50センチの蛆虫のような奴とか、全身が尖った骨みたいな奴、13本足の牙だらけのヒトデみたいな奴が釣れた。
釣りを辞めた。
みんなでパレボレのナンを食べた。
チーズ入りでみんなが喜んだ。
そして夜が近付いて来た。
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