第2282話 「カタ研」無人島サバイバル

 前回の「カタ研」定例会。

 強化外骨格を用いたモビルスーツの起動実験を成功させて、私たちは更なる研究を進めることになった。

 その時にも、実際の運用データを基に、みんなで改良点や新たな開発のことを話し合った。


 「でも、俺たちスゴイものを作ったよな!」


 坂上さんが嬉しそうに言う。

 もう何度も同じことを言っている。


 「石神さんたちは別だけど、俺たちにもちゃんと操縦で来たからなぁ!」

 「でも、まだ動きが速く出来ますし、出力も上げましょうよ!」

 「そうだよね! それにもっと小型化もしたいし」

 「それいいですね! 本当に一回り大きなスーツタイプもいいですよね!」


 みんなで楽しく話し合う。

 一通り、次の課題を決めてから、来月のゴールデンウィークの予定を話し合った。

 大学もその前後から休講が多くなる。

 どこかへ出かけるにはいい機会だ。

 普通の旅行でもいいのだが、何か「カタ研」らしい活動もしたい。

 ルーとハーからゴールデンウイークの活動の提案があった。


 「サバイバルキャンプだよ!」

 

 あー。

 二人はサバイバルキャンプが大好きだ。

 タカさんが普通のキャンプの楽しさを教えて、そっちも大好きになったが、サバイバルキャンプは別の楽しみのようだ。

 

 「今度はね! 無人島に行こうよ!」

 「無人島?」

 「そうだよ! 私たちは漂流して無人島に行ったんだよ!」

 「あそこがサバイバルキャンプの本質なの!」


 まあ分からないでもないけど、やる必要ある?

 二人が一生懸命に自分たちの無人島漂流の話をした。


 「メキシコ沖の無人島でね!」

 「周りはサメだらけでね!」

 「二人とも全裸だったんだから!」

 「だからサメとかの革で服を作ったの!」

 「食料も自給自足だよ!」

 「でも美味しかったぁー!」


 みんな面白がって聞いている。


 「本当の無人島に行くとね、生命力が回転するんだよ!」

 「生きる力がどんどん湧いてくるの!」

 

 あんたたちだけでしょう。


 「それは本当かな?」

 

 なんか坂上さんがノッた。


 「「本当だよ!」」


 ルーとハーが更に自分たちの体験を話していき、段々みんながその気になっていく。

 それに何度もサバイバルキャンプをして、サバイバルの知識も勉強して来たのだと訴える。


 「海水から真水が作れるよ!」

 「食べられる動植物も勉強したよ!」

 「快適な寝床も作れるしね!」

 「海の幸はまかせてね!」


 みんなどんどん引き込まれている。


 「柳さん、どう思う?」


 私は双子のサバイバルキャンプを知っている柳さんに小声で聞いてみた。

 

 「亜紀ちゃんの心配も分かるけど。まあ全裸じゃ無ければちょっと興味はあるかな」

 「そうですか!」

 「うん。本当に何もない状況で生きてみるっていうのは、何か新しい発見があるかもだよ」

 「柳さんは真面目ですねぇ」

 「そりゃそうだよ」


 真夜にも聞いた。


 「真夜も知ってるでしょ? どう、行きたい?」

 「全裸は嫌ですが、まあ、ルーちゃんとハーちゃんには今「花岡」も特訓してもらってますし」

 「それは別だよ! 純粋にサバイバルキャンプってどう?」

 「まあ、ちょっと面白そうですよね?」

 「そっかぁー」


 まあ、柳さんと真夜がそう言うならいいか。

 みんなも行きたそうだし。

 私たちの話が聞こえたらしいハーが言った。


 「亜紀ちゃんもいいかな?」

 「うん。じゃあ、行こうか」

 「「やったぁ!」」


 そういうことで、「カタ研」の無人島サバイバルキャンプが決まった。

 ゴールデンウイークは石神家で既に予定があるので、連休が終わってからになる。

 全員で予定を調整し、5月10日から2泊3日の予定となった。

 肝心の無人島は、既にルーとハーが探してあるらしい。


 そこまでは飛行艇で行くということだった。

 なんと双子が既にベリエフ「Be-200」飛行艇を購入していた。

 やっぱり絶対に行くつもりだったんだ。

 行かなかったとしても、双子の資産ならば何のこともない。

 それにしてもなぁ。


 「虎」の軍の「タイガーファング」は、軍事行動でしか使えないことになっている。

 「飛行」は私たちしか使えないし、個人の行動で「花岡」は使ってはいけない。

 

 「飛行艇は誰が操縦するの?」

 「元自衛隊員のパイロットを雇ったよ」

 「手回しがいいね」

 「まあね!」


 行きと帰りを頼めるらしい。

 普段は海上事故の救助活動などをしている方らしいが、今回協力してもらえるそうだ。


 「「Be-200」はそのまま貸与ということにするの」

 「私たちが必要な場合は飛ばしてもらうの」

 「そうなんだ」

 

 なんとも贅沢な話だ。

 「Be-200」は旅客機タイプなので、大勢が乗ることが出来る。

 「カタ研」のメンバー14人がビジネスクラス仕様で乗っても余裕がある。

 ほとんど、今回のサバイバルキャンプしか使わないだろうけど。

 

 とにかく、私たちはサバイバルキャンプの準備を話し合った。






 5月9日。

 私たちは明日から無人島サバイバルキャンプへ。

 皇紀はパムッカレ。

 タカさんは聖さんの所へ行くようだ。

 問題はロボで、柳さんが最終確認をした。


 「ねぇ、ロボ。私たちと一緒にキャンプに行こ?」


 ロボが柳さんの足をポンポンした。


 「一緒に行く?」


 ロボが後ろを向いて床を前足でこする。


 「え、嫌なの?」


 するとまた柳さんの足をポンポンしてから、床を何度もこする。


 「柳さん、行きたくないんですよ」

 「そっか。残念だなぁ」


 ロボがまた柳さんを向いて床をこすった。

 なんかちょっと様子がおかしい気もする。

 でもタカさんが言った。


 「じゃあ、早乙女の家に頼むか。ロボ、早乙女の家でいいな?」

 「にゃう」


 ロボがタカさんの足をポンポンした。

 タカさんが電話し、早乙女さんの家で預かってもらうことになった。

 タカさんが雪野さんにロボを預けに行くと言ってくれた。

 ロボがジッと柳さんを見ていた。


 「?」


 柳さんもロボの様子が違うことに気付いていたようだけど、結局そのままにした。

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