第2248話 《デモノイド》戦 Ⅲ
ゴールデンウィークが明け、いつものように中学校へ行った。
早乙女さんや愛鈴さんには止められたが、俺が頼んで行かせてもらった。
「アドヴェロス」の本部から、早霧さんと愛鈴さんがグラディエーターで送ってくれた。
デュールゲリエも3体一緒だ。
帰りも迎えに来てくれる。
デュールゲリエは、このまま周辺を見張るはずだった。
この2日間で、5人組の襲撃者たちのことが多少分かった。
早乙女さんの奥さんの雪野さんが量子コンピューター「ぴーぽん」を使って、都内の監視カメラの映像を解析してくれた。
その結果、5人組の襲撃者の顔や全身の映像が集まり、全員に配られた。
全員が綺麗な顔立ちをしていて目立つ連中だ。
それに常に笑顔でいるのが気持ち悪い。
ただ、車両で移動しているらしく、あまり映像は多くは無い。
使っている車両もまだ特定できていない。
今は雪野さんが映像で捉えた地点から付近を走行する車両を全て洗い出している最中だ。
ナンバーから持ち主を洗い出し、篩に掛けている。
「アドヴェロス」の本部では寝る時以外は、ほとんど愛鈴さんと一緒だった。
早霧さんたちと組み手をし、食事も早霧さんが作ってくれる。
早霧さんは料理の腕前が最高だった。
そして、常に愛鈴さんが一緒だった。
「今日は磯良の部屋で一緒に寝ようかなー」
「いや、勘弁して下さい」
「じゃあ、磯良が私の部屋に来なよ!」
「それも勘弁して下さい!」
別に愛鈴さんは俺に性的なものを求めているわけではない。
ただ、俺と一緒にいたいと思ってくれているのだ。
「おい、愛鈴。年頃の男は時々独りにしてやれよ」
「なんでよ?」
早霧さんが笑って人差し指を輪にした指で上下に動かした。
「変態!」
「ワハハハハハハハ!」
「磯良はそんなことしないよ!」
「バカヤロウ!」
「じゃあ磯良、私が手伝ってあげる」
「いいですってぇ!」
葛葉さんや鏑木さん、十河さんまで笑っていた。
みんな緊張の中で、リラックスしようとしている。
いい人たちだ。
中学校で、もうすぐ昼の休憩に入る頃。
俺の端末が鳴った。
「磯良! デュールゲリエから連絡だ! お前の学校の外壁に未確認のナンバーのバンが止まった! あの5人が乗っている!」
「分かりました。すぐに外に出ます」
「いや、俺たちも向かっている! お前は校舎内で待っていろ!」
「はい!」
その時、大きなプレッシャーが来た。
咄嗟に窓を開けて外へ飛び出した。
3階の窓からだったので、教室が大騒ぎになる。
ミサイルが発射されていた。
俺の教室ではない。
俺は「無影刀」でミサイルを斬った。
もう対応しなければ、被害が拡がると判断した。
塀を乗り越えて5人が校庭に立っていた。
もう外に出た俺を見つけている。
一人が携帯ミサイルの筒を捨てた。
《ジャベリン》のようだった。
上空からデュールゲリエが俺の傍に着地し、俺を護ろうとする。
二人の男が大きなライフルをこちらへ向けた。
南アフリカ製の対物ライフル《ダネル NTW》だった。
大口径で重い弾頭のものだ。
「イソラ!」
女性の一人が俺の名前を呼んだ。
やはり俺たちの情報を掴んでいる。
俺は走りながら5人に接近する。
5人は笑顔を浮かべて俺を見ていた。
「無影刀」で《ダネル NTW》を持った一人を斬った。
「オウ!」
男が笑いながら見えない刃をかわし、他の4人も高速で移動を始めた。
《ダネル NTW》で俺を撃って来る。
5人は俺を狙うばかりではなかった。
無作為に校舎へ《ジャベリン》や《ダネル NTW》を撃ち込んで行く。
俺が「無影刀」で防ごうとすると、俺へ攻撃を撃ち込んで来る。
デュールゲリエも「槍雷」などで攻撃していくが、効果は無い。
ジャベリンのミサイルがどこかの教室へ入って爆発した。
《ダネル NTW》も撃ち込まれていく。
もう無差別攻撃を防ぐ余裕もない。
5人の攻撃はどんどん上昇していく。
俺は「無影刀」で弾丸を斬り裂き、5人へ攻撃を続ける。
何度か「無影刀」が入ったはずだが、5人は斬られていない。
「アハハハハハハ!」
細身の女が俺に迫る。
両手にクックリナイフを握っている。
デュールゲリエの一体が女に「槍雷」を撃ち込んだ。
女は余裕でかわし、俺に向かって来た。
デュールゲリエが俺を守るために前に出た。
女は笑いながらデュールゲリエの胸を斬り裂いた。
胸を大きく抉られて、デュールゲリエが地面に転がる。
ライフル弾も跳ね返す強度のはずだった。
他の2体のデュールゲリエが女を襲う。
しかし、《ダネル NTW》の射手がデュールゲリエたちを撥ね飛ばしていく。
「死になぁー!」
女が俺にナイフを振り下ろして来た。
俺は「無影刀」でナイフを斬った。
ナイフは斬れた。
「オーリャ! 離れろ!」
2メートルの巨漢が叫んだ。
女は悔しそうな顔をして高速移動で離れた。
俺がマントラを唱え出した直後だ。
「ここまでだ!」
全員が俺を見て、すぐに塀を乗り越えて行った。
すぐに車の発射音がする。
俺はデュールゲリエたちの状態を見た。
胸を斬られた1体も、《ダネル NTW》で撃たれた2体も破壊されてはいない。
安心した。
俺を必死に守ろうとしてくれたのだ。
10分後に早霧さんと愛鈴さんが来た。
「ファブニール」だ。
俺はデュールゲリエたちを積み込んで、そのまま「アドヴェロス」の本部へ帰った。
学校では騒ぎになっているかもしれないが、どうしようもない。
あの攻撃で、何人が犠牲になったのだろう。
愛鈴さんがずっと車の中で俺を抱き締めていた。
「俺の「無影刀」が効きませんでしたよ」
「そうか」
「でも、奥義を出そうとしたら逃げられました」
「そうか」
早霧さんも苦い顔をしていた。
「相当な連中だな」
「はい」
愛鈴さんが俺を抱き締めながら言った。
「早霧さん! あいつらをやるよ!」
早霧さんが笑った。
「そうだな」
「必ずぶち殺す」
「ああ」
三人で誓い合った。
俺の中学校では、34人の死者が出た。
負傷者は82名。
ジャベリンのミサイルで死んだ者が大半だ。
顔も知らない1年生の教室だった。
俺の戦意を削ぐために殺された。
必ず仇は討ってやる。
俺は誓った。
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