第806話 挿話: 石神家子ども会議

 亜紀、皇紀、ルー、ハーの四人が、地下の音響ルームに集まっていた。

 平日の午後3時。

 家には他に誰もいない。


 「それでは、今月の「石神家子ども会議」を始めます」


 亜紀が宣言し、拍手が沸く。


 「それでは今月のタカさんの報告を。今月のタカさん当番はルーだったね」

 「はい! 今月は何て言っても、乾さんですね」

 みんながそうだそうだと言う。


 「でも、亜紀ちゃんのレポートが完璧なので、特に報告することは無いかな」

 「あとは諸見さん!」

 「いつもタカさんの絡みがいいよねー」

 「三井ビル!」

 「あー、あれ!」

 「麗星さんも良かった!」

 「亜紀ちゃんと柳さんのー!」

 「その話はまた今度みんなで話し合おう。じゃあ、収支報告。ハー、お願い」


 「えーと、土曜日に来てもらった交通費です。院長先生たちはタクシー三千円くらいかな。六花ちゃんが手配した特別移送車は10万円。一日借りだったからね。鷹さんは地下鉄380円。でもみんな受け取らないから、何かみんなに案が欲しいな。それと何と言っても乾さん。RZの代金と保管と整備料はざっと2000万円くらいでいいかなーと」

 「乾さんには、傘下の会社でお店のバイクを30台購入する手配をしてます」

 ルーが言った。


 「それは「紅六花」へ回すのね。大型免許の人も多いから」

 「なるほど。院長先生はまたルーとハーで?」

 「うん! お土産持って泊まりに行く!」

 「お願いね。六花さんにはどうしよう」

 「石動さんに頼んで、いいヤツ送ってもらう。それをあげるし」

 「でも、それじゃ金額的に合わないよ?」

 「ケースを純金にするから。まあ、三十万円くらいのやつ?」

 「ああ、それならいいね!」

 「鷹さんにはQUOカードを、何かに当選したってことで送るよ」

 「いつもの奴ね」


 「響子ちゃんにも何かあげたいね」

 「また「タカトラ秘蔵写真」を贈るかー」

 「あ、いいね! またいろいろ溜まってるでしょ。皇紀、プリントしといて。みんなで選ぼう」

 「うん、分かった」


 皇紀はノートPCでフォルダ内の写真をプリントする。

 上の複合機へ取りに上がった。


 「栞さんはどうする?」

 「タカさんのパンツ!」

 「「「ギャハハハハハ!」」」


 皇紀がプリントアウトした紙を持って戻った。


 「ねー、皇紀ちゃん。栞さんに何を上げようかって」

 「こないだ暗器を欲しがってたよ。僕がちょっと作ろうか」

 「じゃーそれで!」


 「総資産は60兆円を超えましたー」

 「すごいね!」

 「もう感覚がないよー」





 「それでは次にタカさん情報!」

 「今週は「乾さん関連」で充実したねー!」

 「そうそう。あと、「早乙女さん関連」も結構いいよ」

 「あ、そっちはまだ目を通してないや」

 「皇紀ちゃん! 忙しいのは分かるけどー」

 「ごめんごめん」

 「麗星さんのことは、ちょっと調べなきゃだね」

 「それと、亜蘭ちゃんのこと! あの才能は今後有用だよ!」

 「そっちはルーとハーに任せる。石神一家に是非引き込んで」

 「「うん!」」





 「じゃあ、そろそろ「タカさんベストショット」を選ぼうか!」

 「「「はーい!」」」


 「あ! その前に、今週は石動さんから届いたじゃん!」

 「あー!」


 ハーから石動氏からの今月の送付内容が発表された。


 「先月は六花ちゃん似のものだったけど、今月は痴漢物だね。今まであんましなかったジャンルです」

 「またタカさんの領域が拡がるかー」

 「ハー、巨乳指数は?」

 「そっちは平均以下だね。珍しいね」

 「じゃあ、内容に拘ったセレクションなんだ」

 四人がニヤニヤして笑った。


 「じゃあ、戻って「タカさんベストショット」!」

 みんながそれぞれの写真を見せ合った。


 「今回も迷うなー」

 「このロボと遊んでる写真は?」

 「このアヴェンタドールから降りるのもいいよ!」

 「えー! 私はギターのがいいな!」

 「亜紀ちゃん、いつもそれじゃん!」

 「いーじゃない!」

 「いいけどさ。別なのもちゃんと見ようよ」

 「分かったよ」


 「あ、このルーが撮った寝顔、いいんじゃない!」

 「これはね! 奈津江さんの夢を見てるときのやつ!」

 「あー! じゃあ決まりかな!」

 「タカさん、本当に嬉しそうだもんね!」

 「じゃあ、今回はこれにしますか!」

 「「「賛成ー!」」」





 「じゃー、最後にタカさんを喜ばせる来月の方針を」

 「いよいよ夏休みが近いねー」

 「御堂さんの家と別荘!」

 「大勢で別荘に行けるようになったもんね」

 「あと、重要な場所が」

 「え、なに?」

 「道間麗星さん! 京都だよ!」

 「あー、タカさん行けるかなー」

 「それはちょっと保留ね」

 「亜紀ちゃん、それとなくお風呂か飲んでる時に」

 「うん、分かった!」

 「「よろしくー」」


 「それと、諸見さん、よく最近誘われるよね」

 「タカさんが気に入ってるみたいだよね」

 「あの人無口だけど、いい人だよね」

 「うん! 一生懸命に毎日壁を見てるし」

 「レイをいつも見てるよね」

 「オッパイ派かー!」

 「「「「アハハハハハ!」」」」


 「でもタカさん、レイに手を出さないね?」

 「うん、不思議だと思う」

 「なんでだろ」

 「他で大変だから?」

 「「「「ギャハハハハハ!」」」」


 「柳ちゃんもねー」

 「ちょっと可哀そうかな」

 「だって、御堂さんの娘だから」

 「そーだろーねー」

 「なかなかね」




 「でも、タカさんにはいつも笑ってて欲しいね」

 「そうだね」

 「私たちで少しでも」

 「タカさん、いつも人のことばっかだもんね」

 「じゃあ、この辺で締めようか」

 「せーの!」




 「「「「タカさん! 大好きー!」」」」




 石神家子ども会議。


 それは石神の狂信者のどうでもいい集まりであった。

 他の人間はもちろん、石神も当然知らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る