第567話 挿話: オチンチン「独白」

 俺は高虎のオチンチンだ。

 名前はまだない。

 高虎が生まれた時から俺はくっついている。

 オチンチンの中でも、大型種だ。


 そんな俺も、最初は普通のオチンチンだった。

 しかし、ある時その自覚を変えねばならない出来事があった。


 高虎が小学二年生の時。

 突然高熱が続き、死に掛けた。

 俺も冷や汗をかいた。

 その後も病気がちで、高虎の家はその治療費で大変だった。

 翌年の夏休み。

 高虎は母親と一緒に、父親の盛岡の実家へ行った。

 食費節約のためだ。

 高虎は大食いだった。




 実家は結構金持ちだった。

 田畑を売って、金を得ていた。

 風呂に入った。

 高虎の家は薪風呂だった。

 実家はガス風呂だった。

 見たことがない穴がある。

 

 「あんだ、これ?」


 高虎が俺をその穴に突っ込んだ。


 「アッチィー!」


 俺は火傷を負った。

 真っ赤になり、ちょっと腫れた。

 大変だった。

 俺は実家の人たちに笑われながら、軟膏を塗られ、包帯を巻かれた。

 しばらく痛んだ。


 その時俺は、このままではいかんと思った。

 大型種であることに慢心せず、もっと自分を鍛え、逞しくならなければならない。

 高虎は俺を雑に扱う。

 俺は強くなることを誓った。


 



 小学三年生のある日。

 教室で授業を受けていると、高虎が机の下で俺を出した。


 「ん? オシッコはしたくないぞ?」

 俺は不思議に思った。


 「先生! 石神くんがまたオチンチンを出してますー!」

 隣の席の女の子が手を上げて言った。

 

 「おい! 黙ってろよ!」

 「こら! 石神くん、早く仕舞いなさい!」

 「えー! 俺は自由なんです」

 「ばか!」

 変わった奴だった。

 よく一人で山に入って行った。

 そこでも気が向くと全裸になり、俺は外に出た。

 自然の中は気持ちがいい。


 小学五年生の時。

 俺は知らない興奮を覚えた。

 いつものように高虎が俺をいじっている。


 「あ! なんだこれ!」

 高虎が叫んでいた。

 大型種の俺がさらに「大型」になった。

 力が湧き、強く硬くなった。

 高虎は面白がり、それまで以上に俺をいじるようになった。

 俺も誇らしい気分が大好きになった。


 ある日、俺はオシッコではないドロドロとした白いものを出した。

 それがどういう現象かを高虎も知り、俺は自分が成長したことを知った。

 俺は自分が何故オチンチンに生まれたのかという「運命」を知った。




 高虎には女の子のファンが多くいた。

 中でも熱烈な同級生の知子ちゃんが、高虎に迫っていた。

 カワイイ子で、オッパイが結構大きくなっていた。


 「おい、知子! ちょっとオッパイ見せてくれよ」

 「え、いいよ」

 「すげぇー!」

 「下も見る?」

 「おう!」


 「お前、もう毛が生えてんの!」

 「うん」


 「すっげぇー!」

 「エッチしてみる?」

 「うん!」

 俺は初めて潜った。

 物凄く気持ちよかった。

 高虎は俺を通して、大量の白いものを知子ちゃんの中に吐き出した。




 それから知子ちゃんとしょっちゅうやった。

 高虎は知子ちゃんの反応を見ながら、テクニックを勉強して行った。

 高虎は何にでも勉強熱心だった。

 ある日、知子ちゃんが家の都合で遠くへ引っ越すことになった。


 「石神くんと離れたくない!」

 「俺もだよ」

 「離れていても、忘れないで」

 「忘れないように、最後に一杯やろう」

 「うん」

 呆れるほどサイテーな野郎だった。

 その時には、他にも何人もの女とやっていた。


 だが俺は高虎のオチンチンだ。

 高虎と共に吼える野獣だ。

 俺も知子ちゃんでなければ、ということも全然なかった。





 中学に上がると、女の子との付き合いがどんどん増えた。

 男とは喧嘩で繋がり、女の子とはオチンチンで繋がった。

 既に400人ほどに俺は潜った。

 回数はその10倍以上だ。


 俺は逞しくなっていった。

 高虎もどんどんテクニックを極めて行った。

 しかし、どうにも多すぎる。

 心配になった俺は、相談することにした。



 《超高速オチンチン通信》を使った。

 これで世界中のオチンチンと交信できる。

 周辺の中学生たちのオチンチンと話すと、ほとんどのオチンチンが未経験なのを知った。

 経験済みでも、せいぜい数人程度だ。

 俺はもっと遠くの、しかも逞しいオチンチンに相談した。


 「もしもしチンチン」

 「はい、こちらインドのベンガル虎オチンチンですが?」

 「初めまして。私は石神高虎オチンチンです」

 「あ! ヒューマンU20カテで急上昇中の!」

 「そのようなカテがあるんですか?」

 「はい!」

 なかなか詳しそうな方だ。

 俺は真剣に相談した。


 「大変ですね」

 「はい、大変です」

 「でも、僕らはくっついてるしかないですしね」

 「そうですね」

 「何かあったらまた相談してください」

 「ええ、是非お願いします」

 「それでは、ばいばいチンチン」

 「ばいばいチンチン」


 通信を切った。




 その後、俺は一つ気付いた。

 毎回高虎は普通の人間の数倍の白いものを出す。

 しかし、どうも高虎が産ませたいと思わなければ、妊娠しないようなのだ。

 高虎はそれに気づいていない。

 ただ、気持ちいいからやっているだけだ。

 呆れた野郎だ。


 高校に入って、ついに1000人を超えた。

 その時には俺も鍛え上げられ、高虎の無茶にも耐えられるようになった。

 常に女が群がる高虎。

 それに加え、あっちが凄いとの評判が、爆発的に拡がって行った。

 周辺の女に留まらず、範囲が広がって行った。

 8人の女と一晩やったこともある。

 俺は朝日を見ながら全裸で仁王立ちの高虎にぶら下がり、達成感を味わった。




 高校を卒業し、半年ほど海外に行った。

 その時は状況的に仕方なく、俺は大人しくホースに徹した。

 帰ってから、また凄まじい修羅場を潜った。


 大学に入ったら、今度は10000を超えるかと思っていた。

 大学でも女たちに囲まれた。

 評判を聞いて、別な大学の女たちもよく来た。

 いよいよ、俺の出番か!


 しかし、それは無かった。


 「卒業するまでダメだよ」

 「うん!」


 奈津江という美少女に高虎は恋をし、他の女とも関係を持たなくなった。

 俺は驚愕した。


 悪魔のような誘い方は!

 抑えれば性犯罪を犯すような強烈なお前のリビドーは!

 自分の快楽を追求する、その自由は!


 高虎に問うたが、そういえば俺はオチンチンとしか喋れなかった。


 


 その後、美少女は死に、俺は野獣の復活を覚悟した。


 無かった。


 二十年に亘り、高虎は女と関係を持たなかった。

 相変わらず異常にモテる。

 周囲も女性の方が圧倒的に多い職場。

 キレイな子もカワイイ子も色っぽい子もいる。

 手を出さない。

 なぜだ!



 一つの原因は、大学時代に知り合った友・石動の存在だ。

 高虎は石動コレクションに支えられ、リビドーを発散していた。

 しかし、それは以前もそうだ。

 不思議に思っていると、ようやく女との関係を持ち始めた。

 どんどん増えた。

 俺は再び燃えた!


 特にリッカチャンとは最高の組み合わせだった。

 こんなに俺が燃え盛る子はいなかった。

 鍛え抜かれた俺も、時にくじけそうになるくらいだった。


 でも、何かが違う。


 以前の高虎のような、野獣性よりも、何か優しさを感じる。

 自分のリビドーではないもので、俺を使い出した。

 もちろん、リビドーもあるのだが、それは一部だ。




 ようやく、それに気づいた。




 俺は、「愛」を知った。




 そうだ、俺たちオチンチンは、愛の体現のためにぶら下がっているのだ。

 高虎がそれに気づき、俺も知った。

 天使オチンチンの讃美歌が聴こえた。


 《超高速オチンチン通信》を久しぶりに使った。


 「もしもしチンチン」

 「はい、ベンガル虎オチンチンです」

 「お久しぶりです。石神高虎オチンチンです」

 「やあ、お元気ですか?」

 「はい。お陰様で「愛」に気付きました」

 「そうですか。それではいよいよ「カイザー・オチンチン」になるんですね」

 「なんですか、それは?」

 「オチンチンの中のオチンチン。オチンチンの最高峰です」

 「それは素敵ですね」

 「頑張ってください」

 「はい、それではばいばいチンチン」

 「ばいばいチンチン」






 俺は高みを目指そう。

 頑張ろう、高虎!

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