第563話 フランス外人部隊 Ⅴ

 俺たちは俺の家へ集まった。

 四人の子どもたち、栞、鷹、一江と大森、そして聖。

 聖は途中で買った大量のハンバーガーを喜んで喰っている。

 ハーもまだ痛みはあるようだが、元気だ。

 ルーの方が銃弾で抉られた分、動きが鈍い。

 聖以外は、全員がステーキをパクついている。

 鷹がどんどん焼いている。


 「そのまま聞いてくれ」

 俺もステーキを喰いながら話した。

 20時に決戦であることは、既に話している。


 「相手は狡猾なフランス外人部隊だ。わざわざ正攻法で来るわけがない」

 子どもたちはステーキを喰いながら俺を見ていた。


 「敵は、「花岡」の無効がまだ完全ではないフリをしている。そのために50名ほどを捨て駒にした」


 「しかし、実は完全に無効化する術を持っている。だから正面からぶつかろうとしている」

 「「「「はい!」」」」


 「俺たちは銃器の扱いで、俺と聖を除いて素人みたいなものだ。だから当然敵は俺たちが「花岡」で勝負に来ると考えている」

 「「「「はい!」」」」


 「だからな、「花岡」をぶっ放せ!」

 「「「「はい!」」」」


 「皇紀」

 「はい!」

 「「花岡」を無効化する仕組みは想像できるか?」

 「はい! 考えていたんですが、多分基本は僕らと同じかと」

 「周波数か」

 

 「そうです。恐らく「闇月花」だと思います」

 「蓮華の襲撃もそれだったもんな」

 「はい。「花岡」の中で「花岡」防御はあの技です。中央公園で、その有効性を試していたのだろうと」

 「いい読みだ」

 「僕らの「周波数」は別なアプローチですから、実効性は全然違いますけどね。「闇月花」だけで防ぐのは無理です」

 「じゃあ、今回のあいつらの自信はなんだと思う?」


 「多分、出力の強化じゃないかと」

 「なるほど」

 「敵の弾の方も、同じ仕組みかと思います」

 「音か」

 「その通りです! タカさん、流石ですね!」

 電磁波ではなく、音波の周波数を利用している。

 恐らく、弾頭にそれ用の笛穴が空いているはずだ。


 「皇紀! 対策を!」

 「電磁波には「轟雷」で十分かと。お姉ちゃんに特大の「轟雷」を撃ってもらえば」

 「弾丸は!」

 「そちらは超音波の防壁を。出力を上げればいいんですが、今「闇月花」の解析も並行しています。それが判明すれば倍音なりで無効化できると思います」


 「よし! 一江、警察とマスコミの動きを!」

 「はい! 大使館周辺の事件はアメリカ大使館を狙ったテロリストとの発表があります。中野でルーちゃんとハーちゃんが襲われた方は、ヤクザの抗争とのことで捜査が始まっています」

 「どちらも俺たちに繋がってねぇな?」

 「はい! どちらもすべての遺体が回収されていますので。中野の方は相手方ですけどね」


 「じゃあ、ブリーフィングだ。ああ聖!」

 「おう!」

 「お前は覚えなくてもいいぞ」

 「おう!」


 「敵は中央公園を指定してきた。恐らくは高性能爆薬をしかけている。もしくは毒物だ。放射性物質の可能性もある」

 「外道だね」

 栞が言った。


 「その通りだ。奴らは人間がやらない手段を平然と取る。だから最初に公園ごとぶっ飛ばす」

 「あ! 私にやらせて下さい!」

 亜紀ちゃんが言った。


 「じゃあ任せるぞ」


 「どうせ後から車両で生き残った俺たちを殺しに来るつもりだ。そいつらを迎え撃つ。また武装ヘリが出てくるし、ミサイルも撃って来るだろう。亜紀ちゃんと栞に任せていいか?」

 「「はい!」」


 「ルーとハーの亡霊は周辺の観測員を抑えろ。なるべく殺すな」

 「はい!」

 「生きてるって!」


 「皇紀はジャミングに専念しろ。鷹、皇紀を守ってやってくれ」

 「「はい!」」

 「双子が観測員を全員抑えたら、「俺たちの花岡」の使用を許可する。何か質問はあるか?」


 「警察の対応はどうします?」

 一江だ。


 「それは向こうがやってくれる。別動隊が動くだろう。一応こっちも用意する」

 「俺は?」

 「聖は天才だから遊撃を頼む。またM82でいいか?」

 「おう!」


 


 俺たちは食事を終え、出発した。




 新宿中央公園は、前回の破壊から修復され、広場も復元されていた。


 「お前に恨みはねぇんだけどよ」

 亜紀ちゃんが「轟閃花」を放とうとすると、聖が駆け出しそうになった。

 亜紀ちゃんに髪を掴んで止められる。


 「まだです」

 バカの扱いが上手い。

 「轟閃花」は中央公園をすべて消し去った。

 俺たちは中へ入る。

 皇紀がハマーから降ろした機器をセッティングする。

 鷹は用心深く周囲に注意を向けている。


 三機の攻撃ヘリ・ヴァイパーだ。

 亜紀ちゃんが特大の「轟雷」を放つと、あっけなく落ちた。

 装甲車が来る。

 轟音が響き、装備されていたジャベリン対戦車ミサイルとブローニング重機関銃が破壊されていく。

 聖だ。

 相変わらず戦闘の天才だ。

 俺の指示はまったく必要ない。

 バカだが。


 装甲車から兵士が飛び降りて向かってくる。

 おかしい。

 俺の中で警鐘が鳴っている。

 あまりに想定内過ぎる。

 あまりに簡単に撃破でき過ぎる。


 ルーから通信がインカムに入った。


 「タカさん、おかしいよ! とっても変な波動がある!」

 「どういうことだ!」

 「おかしいの! 生き物の気配なんだけど、どうも違うみたいな!」

 「危険な奴なのか?」

 「分かんない! でも「まとも」じゃない!」


 公園では亜紀ちゃんが次々に兵士を撃破していく。

 栞も抜けてくる兵士をやっている。

 聖も炸裂弾で屠っている。



 俺は周囲に注意を払った。



 強烈な「圧」を感じた。


 「全員伏せろー!」




 俺たちの頭上を真っ赤な電光が薙ぎ払った。




 とんでもないモノが現われた。

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