第562話 フランス外人部隊 Ⅳ

 ハーが運ばれた時、既に院長がオペの準備を整えていた。


 「俺が絶対に助けるからな、ハーちゃん!」

 「うん、お願いします」

 「なんて可哀そうに! ちょっとの間眠ってね」

 「はい!」

 全身麻酔をかけた。

 

 「鷹くん、階段から落ちたって?」

 「はい。手すりの突起にぶつかったと聞いています」

 「そうか。早速オペだ」

 「はい」

 比較的簡単なオペだ。

 鷹も安心して見ている。

 院長の施術は美しい。

 胸部を一部開き、折れた肋骨を元に戻す。

 信じられないものを見た。


 肋骨が自然に癒着した。


 続いて肺の破れを縫い合わせる。

 縫合の合間に、すでに傷がふさがっていった。


 (これが石神先生の言っていた院長の「光」!)


 石神自身も、この光によって救われた。

 1時間ほどでオペは終了した。


 「お疲れ様でした」

 「あとは頼んでいいかな」

 「はい!」

 院長は出て行った。


 「早く元気になって、石神先生を安心させてね」

 鷹は眠っている少女の額を撫でた。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 家での段取りを済ませ、俺はベンツで病院へ向かった。

 既にハーはオペを終え、全身麻酔から目を覚ましていた。

 亜紀ちゃん、ルー、聖、栞、鷹、そして聖が集まっていた。

 ルーは全身に包帯を巻き、ハーはベッドにいる。


 「ルー!」

 「ハーだよ」

 「お前、こんなになっちまって。大丈夫かルー!」

 「だからハーだって!」


 「みんな!」

 「「「「はい!」」」」


 「ハーの弔い合戦だ!」

 「「「「はい!」」」」

 「生きてるよ?」


 「あのカワイイ俺のハーを、よくも殺したな!」

 「生きてますって!」


 「ハーの墓にあいつらの首を並べるぞ!」

 「「「「はい!」」」」

 「だから生きてるって!」


 「ハー、時々ステーキを供えてやるからな」

 「え、毎日食べたい」


 「どうせ喰えないから、ちょっと安いのでいいよな」

 「やだよー!」


 「待ってろ、あいつらの首を喰わせてやるからな!」

 「そんなのいらないよー!」


 「お前ら、何やってんの?」

 聖が言った。




 俺は大使館に寄って、俺が捉えた男からの尋問の結果を聞いた。

 敵のアジトが分かった。

 しかし、恐らくもう消えている。

 もう一つ、男たちから高周波無線機を手に入れている。


 俺はルーを連れて外へ出た。


 「どうだ?」

 「うーん、なんとなく感じるけど、まだはっきりしない」

 俺たちは周辺を歩いた。


 「あ、ちょっと強くなったかな」

 「方向は分かるか?」

 「えーと、あっちかな」

 俺は高周波無線を開いた。


 「あ! 分かったよ!」

 無線に反応したのだろう。

 隠れていた奴を捉えた。

 俺はルーに先導させ、走った。


 「あのビルの屋上!」

 ルーを下で待機させ、俺は壁を「疾走」した。

 数秒で屋上に上がる。


 「!」

 「もう逃げられねぇぜ」

 男は上着を開き、武装が無いことを示した。

 観測員だ。

 やっと一人捕まえた。


 「捕まったら、全部話してもいいと言われている」

 「そうか」

 「抵抗するほどの報酬はもらってないからな」

 「じゃあ話せ」

 男は、残存兵力が50名ほどいること。

 恐らく第二波の攻撃があることを話した。


 「「花岡」が無効になる仕掛けはなんだ」

 「俺もよく知らない。知らされていないからな」

 俺は大使館に連絡し、荒事の人間に観測員を渡した。

 大したことは聞き出せないだろう。





 その時、俺の電話が鳴った。


 「よう、ロメオ(色男)!」

 「誰だ?」

 「今更だろう。俺はアダン。今回の指揮官だ」

 「「業」のケツの穴を舐めまわすクズか」

 「そうだよー。あいつは俺の部下だったが、いつの間にか金持ちになってなぁ。今じゃ俺を雇えるくらいになった」

 「お前、生きて帰れると思うなよ?」


 「アハハハ! お前、随分と自信家だな」

 「俺はやると決めたことは必ずやってきた」

 「ああ、お前の経歴は洗った。ニカラグアじゃ派手にやってたな」

 「今はあの時以上だ」

 「俺もだ。お前がとっとと逃げ出した鉄火場で、俺は磨き上げて来たんだ」

 「かかって来い」


 「そのつもりだ。またシンジュクでいいか?」

 「分かった」

 「全員連れて来い。今日の20時だ」

 「お前らの首を娘たちに喰わせてやる」

 「そうかよ。俺もお前の女たちを喰ってやるぜ」


 電話が切れた。




 俺の頭の中で瞬時に組み上がった。

 あいつらは、まだ何かを隠している。

 対「花岡」の武装だろう。

 


 「隠してるのがお前らだけだと思うなよ」

 俺は獰猛に笑った。 

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