第291話 顕さんの別荘 Ⅱ
夕食は、当然バーベキューだ。
俺は皇紀を連れて、前に行ったスーパーに行く。
店長さんが来た。
「石神様、お久しぶりです!」
覚えていてくれたようだ。
俺たちはまた大量に買い物をし、そのカートを店長さんたちが引き受けていく。
俺たちのためのレジが開き、優先して会計をさせてもらった。
買い物の大量の荷物を車まで運んでくれ、俺たちは見送られて帰った。
「夏に、また来ますね」
「心よりお祈り申し上げます」
別荘に戻り、みんなでバーベキューの準備をする。
慣れたもので、食材のカットや下ごしらえは早く終わり、子どもたちは勉強を始めた。
ルーとハーも包丁の使い方は抜群で、大体の料理を任せられる水準だ。
亜紀ちゃんと皇紀は言うまでもない。
他の家事も全部できる。
全員が、いつでも独り暮らしができるようになっている。
ついでに言うと、サバイバルの訓練もしている。
俺は丹沢山系の一部を買い取り、「密かに」子どもたちと出掛けていた。
十二分の成果を出していた。
夕暮れになり、俺は顕さんを起こしに行く。
子どもたちには、バーベキューの支度をさせた。
「顕さん、そろそろ夕食です」
「ああ、本当に寝てしまったな」
顕さんは着替えることなく、ベッドに寝ていた。
「大丈夫ですか?」
「ああ、お陰でスッキリしたよ」
俺は洗面所を案内し、下で待ってますと伝えた。
全然、スッキリした顔ではなかった。
しかし、俺は黙っていた。
「いいかーお前ら!」
「「「「はい!」」」」
「今日も俺の一番大事なお客様の顕さんがいらっしゃる!」
「「「「はい!」」」」
「前回と同様だ! 顕さんが召し上がるのを邪魔しやがったら、縛って木に吊るすからな!」
「「「「はい!」」」」
「万一、顕さんに攻撃なんかしやがったら、お前らを焼いて喰うからな!」
「「「「はい!」」」」
「まあ、お前らの喰いっぷりは顕さんも楽しんでくださる!」
「「「「はい!」」」」
「お前らも存分に喰え!」
「「「「はい!」」」」
「いただきます」
「「「「いただきまーす!」」」」
俺は次々と食材を網に乗せていく。
子どもたちは目を光らせながら、俺の合図を待っている。
「串には刺さないんだね」
「はい。串が武器になるもんで」
「な、なるほど」
顕さんは納得された。
「よし、いいぞ!」
一斉に手を伸ばして来る。
誰が何を狙い、どういう動きで来るのかを、互いに読み合っていた。
双子にはさまれた時点で、皇紀は肘が飛んでくることを読んでいた。
皇紀は左側のハーの肘をかわしながら膝の後ろを蹴り、地面に座らせる。
驚いたのは亜紀ちゃんも皇紀の右にいたルーに同じことをやった。
亜紀ちゃんと皇紀が共同戦線を張っている。
双子の連携に対する同盟だ。
最初は双子も動揺していたが、すぐに共同戦線を張り、戦術の読み合いになっていった。
顕さんは前回も見ているが、やはり子どもたちの攻防を心配そうに見ている。
俺は、大丈夫ですからと言い、顕さんの皿にいい肉を乗せていく。
顕さんは、それほど召し上がらなかった。
分かっていた。
ビールも1本だけだ。
酒が好きな方だった。
あとは楽しそうに子どもたちの大食いを見ておられた。
俺は鍋を火にかけ、顕さんにカップを渡す。
家で作ってきた、コンソメスープだった。
「ああ、これは本当に美味いな!」
顕さんも感動してくれた。
飲んでから少し食欲が出て来たのか、時々網から取られた。
大量の食材が、いつも通り肉食獣の腹に消えた。
辺りはすっかり暗い。
顕さんに最初に風呂に入ってもらい、俺たちも済ませた。
俺は梅酒の瓶を抱え、亜紀ちゃんや皇紀に氷とグラスを持たせる。
屋上に上がった。
その光景を見た瞬間、顕さんが泣き出した。
双子が背中に手を回し、顕さんを席につかせた。
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