そして音楽は続く(3)
僕はベッドから体を起こして、机に座る。そして、目の前に置かれた封筒を手に取る。
ずっと、この手紙を読むことを避けていた。これを読んでしまえば、本当の意味で彼女との時間の全てが終わってしまうと思ったからだ。読まなければ、新しい未来が無くても、物語が終わることはないと、現実から目を背けていた。
けれど、それでは駄目だ。彩音の母が最後に見せた微笑みを思い起こし、心を決めた。
僕が自信を持って言ったのだ。彩音は音楽と共にある幸せな人生を生きた、と。
ならば、僕自身がその最後を放り捨てるようなことをしてはいけない。彼女の意思が込められた言葉をしっかりと受け止めなければならない。
僕は封筒を開け、中に入った便箋を大切に取り出す。折り畳まれたそれを慎重に開いて、紙上に目を落とす。そこには丸っこい文字が丁寧に並べられている。とても見慣れた彩音の字だ。
僕は何かが溢れそうな目を瞑り、一度呼吸を置く。
そして、ゆっくりと瞼を開き、彼女が綴った言葉を読む。
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